VIEW21 2001.06  IT Introduction 情報技術が学校をどう変えるのか

高知県のIT環境推進状況

県内のIT環境を統一し
学習情報の共有化を推進

 本誌4月号で「ミレニアム=プロジェクト『教育の情報化』」を推進する文部科学省の施策を紹介した。しかし、学校のIT化については各地方自治体で足並みが揃っているわけではない。様々な事情を抱え、思うように進んでいない地方自治体も少なくない。その中で、高知県では'01年度からIT関連の行政機関を統合し、県教育委員会事務局内に新たに情報教育推進課を設置した。高知県としてはどのような方針でIT化を進めていこうとしているのか。情報教育推進課にお話をうかがった。


 高知県では、県教育委員会が中心となって、3年ほど前から県内の小中高など各校の情報技術の基盤整備を進めてきた。県立高校については'00年度末までにすべての学校に校内LAN(端末を通信回線で結ぶ通信網)を整備するとともに、県内のすべての公立学校は県教育委員会が管理しているサーバ「教育ネット」を経由したインターネット接続を完了した。すべての生徒、すべての教師が教室や職員室などに設置されたパソコンを使って自由に情報を収集し、共有できるようになったのだ。県教育委員会事務局情報教育推進課の寺尾康主任は、高知県が目指すIT環境の姿をこう話す。
 「ITを利用して児童や生徒が分かりやすい授業を実践することが、この事業の目的です。そのためには、情報収集や成績処理など、コンピュータを道具として使うだけではなく、学校を越えた教師間の連携という、今までの教育現場ではあまり行われていなかった面をIT活用を通して強化していきたいと考えています」
 インターネットで調べたり、コンピュータで制作した教材を使うことばかりが「ITを利用した指導」ということではない。教師が個々に蓄積してきた指導のノウハウ、プリント教材などをデータベース化し、単なる知識としてではなく、「指導の知恵」として、ネットワークを通じて他の教師にも参考にしてもらったり、授業で活用してもらえるような学習情報の共有を積極的に進めていきたいと教育委員会では考えている。

全校にIT専門の分掌を作る

 ここでネックとなるのはアプリケーションソフトだ。教師や学校によって使用しているワープロや表計算などのアプリケーションソフトが異なれば、利用したい教材のデータが他校にあっても、自校のパソコンでは開けない。さらに、アプリケーションソフトが違うために前任校で制作した教材が使えなくなることもあり得るのだ。
 そこで、高知県ではソフト面の整備も重要と捉え、県立高校に導入しているワープロなどの基本的なアプリケーションソフトを統一している。また、情報を共有化する場としては、県教育委員会のホームページ上に教師が作成した教材をデータベース化して公開するページを常設。さらに、小中高大の4校種が参加してITを活かした指導法を研究する「BLUE BIRD連携事業」を推進している。
 「先生方は自分自身の指導法に誇りを持つ一方、これでよいのかと不安を抱いている面もあるようです。ホームページや『BLUE BIRD連携事業』などを通して他の先生の指導法に触れることで、自分の指導法を見直すことができるようになれば、生徒が分かりやすい授業につながっていくのではないでしょうか」と、田村壮児課長補佐は、教師間の交流が活発になることで指導が変わるのではないかと期待を寄せる。


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