VIEW21 2001.06  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 模試を活用した指導

■part 6■ シーン別指導例
「伸びる可能性」を具体的に提示し生徒のやる気を喚起

 1、2年次では特に生徒の学習意欲を向上させる指導を心掛けたい。模試の度に生徒全員と面談するのは時間的に難しいが、成績が下降気味だったり、成績に対して神経質になっている生徒については少しでも時間を見つけてアドバイスすれば生徒の不安解消になる。
 また、成績が急降下した生徒を呼んで話を聞いてみると、保護者とうまくいっていない、部活の問題で悩んでいるなど、学習面以外に原因があることも考えられる。生徒を理解するための材料としても模試を活用し、生活指導の面からも対応を心掛けたい。
 成績が下がった生徒に対して、厳しい言葉だけでは反発を招く。「英語は偏差値が5ポイントも上がっている。君の努力の結果だね」など、まずは良いところを褒めることが大切だ。その上でなぜ成績が落ちたのか、どの教科・分野が弱いのかを生徒自身に考えさせ、具体的な対策を提示する。
 得点の「伸びる可能性」を具体的な例とともに示すのも効果的な方法だ。生徒の目の前で、このケアレスミスを防げば何点増えた、あと一歩だった問題ができていれば何点増えたと、点数を積み上げて説明する。生徒は自分の成績の「伸びる可能性」を実感できるだろう。
 模試データで生徒の一番の関心は偏差値だ。生徒の目が偏差値ばかりにいくのはある程度やむを得ない。それを逆手に取って、「○○大を志望しているんだろう。それなら偏差値60が必要だ。あと少しだから頑張れ」と発奮させる材料に使うとよいだろう。

模試データから教師が受験校を判断できる目を持つ

 3年次になったら、偏差値や合否判定だけでなく、志望校のセンター試験と個別試験の配点比率、入試でキーとなる教科に対するその生徒の伸びに注意を払うようにする。中心となるのは、国語、数学、英語の3教科だ。総合得点が良い場合でも、この3教科が良かったためか、理科や地歴・公民が良かったためかで、意味合いはかなり異なる。理科、地歴・公民は比較的短期間で得点を伸ばすことが可能なので、理科、地歴・公民のおかげで総合得点が良い場合は、他の受験生に追い上げられる危険がある。逆に国語、数学、英語は良かったのに総合得点が伸びなかった場合は、理科、地歴・公民の勉強を増やせば解決できる可能性が高い。
 同様に、成績の上下が激しい生徒の場合にも、どの科目に原因があるのかを見極める必要がある。また、マーク式と記述式での成績の違いにも注目して、対策を立てさせる。
 1年次に成績が良くて、じりじりと下がり続けている生徒に対しては「やればできる」とプライドをくすぐる一方、現実を見つめさせ、弱点補強の具体的なアドバイスをする。
 受験直前でも第1志望校合格が難しい生徒に対しては、担任の側からの他の大学の提示が必要なケースもある。提示する大学の学部の特徴や、就職先の傾向、大学院進学率などの情報をきちんと伝え、生徒が納得できるようにしていきたい。
 受験前の最後の模試は11月が主流だ。そのため、最後の模試の合格可能性判定が悪くても、受験本番までにどれだけその生徒の成績が伸びるのか、模試データはもちろん、校内データも考慮に入れた判断基準を持つことが大切となる。生徒個々の「これからの伸び」を予測した上での判断は、教師にしかできないのだ。


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