VIEW21 2001.06  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 模試を活用した指導

■part 4■ データ分析
結果を加工し学校独自のデータを蓄積

 模試結果は、学校で独自のデータに加工して蓄積すると、有効性はぐんとアップする。例えば、模試で、ある大学の合格可能性判定がDと出ても、学校独自に蓄積したデータから「学年で○番以内に入っているから、自校の実績から見て合格可能性は十分ある」と独自性を踏まえた判断を導ける。また、学年全体の学力データから学年での弱点教科を明らかにして、指導の改善に役立てることもできる。
 そのためにも、模試データが返ってきたら、学年全体で分析会を開きたい。学年全体の学力データ、全国データや隣接校データとの比較、学年全体の課題の把握、学力到達度の確認、授業の進行と突き合わせる。授業計画を修正すべきものについては、具体的な対策を立てる。教師個々が独自に分析した結果も、分析会などで提供する。こうして、学年共通の課題として教師同士が認識することによって、指導の足並みを揃えていきたい。また、学年全体の課題は学年通信などに掲載して、生徒にも認識させるようにしたい。
 生徒個々のデータは、パソコンなどを使って1年次から蓄積するとよいだろう。成績推移がすぐに分かるだけでなく、担任が替わってもそのまま指導に活用できるからだ。

模試データ分析の視点(例)
  1. 全体概況分析
    (1)3教科総合の入学以降の成績推移
    (2)成績推移の状況の自校過年度生との比較
    (3)同様に独自に設定した他校群との比較
    (4)偏差値度数分布による集団としてのばらつき
  2. 上記(1)、(2)を同様に教科別に実施
  3. 大問別得点状況(国語、数学、英語)
これらを学校独自の視点で加工し蓄積していけば、個人指導にも活かすことができる。

■part 5■ 保護者への報告
データの見方を生徒向け以上に分かりやすく説明

 保護者は子どもの成績を気にかけている上、3年間の受験料を負担する。模試結果は学年通信や保護者会などを通じて報告し、同時に、模試を実施する意義も伝えたい。
 ただし、データの見方に関しては生徒に対してよりも分かりやすく説明する必要があるだろう。偏差値を鵜呑みにし、「この成績では○○大は無理」と決めつける保護者もいるからだ。合格判定は絶対的なものではなく、努力次第で志望校に合格できることを理解してもらう。一つには、過年度の校内データと比較した資料を提供するという方法がある。全国平均偏差値だけで説明するより、「校内で○番だから、○○大に合格できる可能性がある」と説明する方が、保護者の納得度はより高くなるようだ。校内データであれば、定期考査、実力テストのデータとも絡めて成績を追うことができ、多角的に生徒の学力を説明できる。
 データを中心に説明する場合に注意したいのは、学年団で見解を統一させることだ。クラスによってデータを説明する基準が異なると、保護者の信頼を得られない原因にもなる。模試の捉え方、データの読み方については、学年団であらかじめ打ち合わせをしておきたい。
 また、三者面談などで保護者と話をする際には、生徒の成績について褒めるところは褒め、一方で指摘すべきところはきちんと指摘して、生徒の現在の実力を正しく認識してもらうことが必要だ。その上でまだ力が伸びることを理解してもらい、生徒の持つ可能性を、保護者が感じ取れるように説明したい。


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