東京大学大学院新領域創成科学研究科
環境学専攻博士課程
三上 直之
「新領域創成科学研究科」と言って、何を研究しているかすぐに分かってくれる人はほとんどいませんね。何しろ既存の学問分野から派生する「未開拓領域の研究」を目的とした、学部を持たない新しい研究科ですから。千葉県柏市の新キャンパスに、この新しい研究科が設置される方針が固まったのは、確か8年ほど前でした。その頃、僕は東京大に在学中で、実は東京大学新聞の記者としてこの新設大学院のことを取材したこともあります。もっとも、まさか自分がそこで環境問題を研究することになるとは思ってもみませんでしたけど(笑)。
勤めていた会社を辞めて、この大学院に入学したのは”新領域“の目指す「学融合による新たな学問の創成」というテーマに強く惹かれたからですが、それだけが入学の理由ではありません。大学卒業後、第一志望だった出版社に就職しました。想像以上の忙しさでしたが、仕事はやりがいもあり、給料などの待遇面にも不満はありませんでした。しかし、取材で全国を飛び回っているうちに、ふと気が付くと自分を振り返る時間も、妻との会話の時間も持てなくなっていることに気が付きました。(本当にこれでいいのか?)、そんな自分の声が聞こえて、一度、立ち止まって自分の歩き方を見つめ直してみよう、そう思ったんです。不況の時代に収入を不安定にすることは、世の中の常識的な判断とは違うのかも知れません。しかし、僕は自分にとって何が本当に大事なのかを、できるだけ自分自身で判断し、行動していきたいと思っています。考えてみると、こんな自分の考え方や行動は、高校時代の経験によるところが大きいような気がします。
高校1年生の秋のことです。僕が所属していた新聞部では2年生が引退し、僕たち1年生が編集責任者となりました。僕らは新たな編集方針を部内でとことん話し合い、ニュース記事には正確な客観的事実だけを載せ、自分たちの意見は論説欄で主張するように変えました。学校を良くしていくためには、十分な情報に基づく、活発な議論の場が必要不可欠であり、本来、学校新聞にはそうした議論をリードする力があると考えたからです。紙や印刷の質を落として、用紙代などが浮いた分、発行回数を増やしたりもしました。そのため、学校の内外で起こる様々な動きに素早く対応できたという自負はあります。
次ページへ>
|