VIEW21 2001.06  Power for the Future
 生徒と一緒に考えたい「生きる力」

やりたいと思ったら、やってみる。
「自分らしさ」はそこから生まれてくると思うから

 新聞部の活動の中で、一番印象に残っているのは、文化系クラブが部室として利用していた旧校舎の老朽化問題です。取り壊しが前提のため補修できないとする学校側と、愛着ある部室を何とか使い続けたいと願う部員たちの間で、大きな対立が生じかねない状況になっていました。僕らは何度も取材を重ね、教師と生徒の代表がじっくりと話し合うべきとの論陣を張りました。結果的に校内で検討委員会が開催されることになり、教師と生徒が同じテーブルについて、前向きな話し合いが行われることになったのです。
 やりたいことをやるといっても、新しいことへの挑戦は大変な負担を伴います。それは過去の遺産に頼れないということでもあります。僕らは自分たちの意志で編集方針を変える以上、絶対に今までより学校の活性化につながるものにしようと、他校の学校新聞や一般紙を参考に、必死で紙面づくりの研究をしました。伝えたいことは山ほどあるのに、伝える力がない未熟な高校生の僕たちにとって、毎日が原稿用紙との格闘でした。苦しいけれど面白い、楽しいけれど悩みが尽きない、そんな1年間でした。そうした日々の活動の中で読解力や表現力もかなり鍛えられたように思います。その意味では、新聞部の活動が教科の勉強や大学受験にも、結果的に役立ったと言えるかも知れません。実際、小論文はもちろん、現代文も英語の長文読解も、そこで求められていた力は読解力であり、表現力でした。
 何をした方が有利かと考えるより、自分が本気になれるものを探す方が大事な局面というのがあるのだろうと思います。もしも、この先、新たに挑戦したいものが見つかって、行くか戻るか迷ったときは、やはり前に進もうと思います。その経験は必ず自分を次の場所へと導いてくれると思うからです。あの高校時代の経験が、今の僕の根っこにあるような気がします。

写真 三上 直之

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