VIEW21 2001.06  創造する 総合的な学習の時間

学びの意義を伝えられる「総合学習」に

――なぜ、これほどの時間とパワーを要してまで、「総合学習」を中核においた教育改革が、今の日本に必要とされているのでしょうか。
上原 私の考えでは、広い意味での社会の変化が背景にあると思います。一つは求められる人材要件の変化。日本が”追いつけ追い越せ“の立場から世界のトップランナーになり、均等で優秀な労働力を提供する時代から、新しい産業や社会をつくっていくような個性豊かな人間が求められるようになったこと。もう一つは、社会構造が変化したこと。核家族化、少子化が進む中で従来の価値観、道徳観を身に付けることが困難になってきました。先の見通しがきかず、バラ色の将来が描きにくくなった結果、生徒の学習意欲も高めにくくなりました。それらを何らかの形で高める先導的な役割として「総合学習」が出てきたと考えるべきでしょう。
 文部科学省は「総合学習」の活動例として国際理解・情報・環境・福祉・健康を挙げていますが、いつのまにかテーマだけが一人歩きしてそれをやればいいんだというように受け取られている風潮がなきにしもあらずです。なぜ、そういう分野の活動が必要か改めて考えてみることが大切だと思います。
井上 生徒は将来、自分がどういう形で社会に貢献できるかが見えないから、学習の目標も見いだせない状況にあります。国際理解・情報・環境・福祉・健康はどれも、生徒が社会貢献を考えるときに重要なものばかりですね。本校の「総合学習」も、それらについて学び、生徒自身に自分はどう生きるかということまでを考えさせるものにしたいと思っています。
 社会に指針がなくて、学びの意義を探しきれない状況にあるのは間違いありません。従来の手法で今後の学校教育がうまく回っていくとは考えにくいですね。やらされてやむなく勉強している生徒を主体的な学習者にする努力なしには、我々が意図する教育はできないと思います。そうした状況に切り込むには、学校を挙げて教育のあり方を方向付ける必要があるでしょう。「総合学習」はそのための一つの切り口になるはずです。
――ありがとうございました。

写真 井上先生
「総合学習」の価値を見極めよう
井上先生(小倉高校)
「総合学習」も教科学習もそれぞれの価値と意味を持っています。教科への読み替えなどをすることなく、「総合学習」の時間をきちんと保障し、教科学習、部活動、生徒会活動など、生徒にはすべての時間に前向きに打ち込んでほしいです。
写真 上原先生
生徒が目標を発見する時間に
上原先生(修猷館高校)
「総合学習」登場の背景には、広い意味で社会の変化があります。生徒は高校でどう学び、大学でどう過ごし、社会の中でどう貢献するのかなど、大きなテーマが見えにくい状況です。それが見えるよう先導する役割を「総合学習」が担うのです。
写真 吉田先生
教師全員がかかわっていくべきテーマ
吉田先生(長崎東高校)
「総合学習」の検討は、SIの共有化から始まります。全ての教師がSIを検討し、それをベースに「総合学習」の取り組みを考えるべきです。「我がこと」として問題を捉え、学年、学校を挙げて検討を行っていく必要があります。

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