VIEW21 2001.06  特集 授業と家庭学習の連結を考える

生徒の高い意欲をどうすれば「学び」に結び付けられるのか

 高校生の「学び」に対する意欲は強い。しかし行動につながりにくいことを検証したのが図3である。
 このデータに見られるように、「a:モチベーション」に関する設問には84%、「b:他者からのインセンティブ(誘因)」では62%(それぞれ平均)の生徒が肯定しているが、学力到達レベルによる肯定の差はほとんど見られない。
 しかし「c:宿題があれば必ずする」や「d:毎日、予・復習をする」といった行動になると学力到達レベルで明瞭な格差が発生している。
 生徒たちの「やる気」は最近低下しているものの、依然として高い水準にあり、対人関係能力の低下が心配されているとはいえ、友達や教師からのインセンティブに62%の生徒が期待している。

図3 意欲と行動のギャップ

 では、生徒たちが持っている「意欲」をどうすれば「行動」に結び付けることができるのだろうか。
 図4に注目すると、生徒の自主性に委ねて家庭学習の実行を期待すると平均脱落率は76%(e:自主的学習のケース[100ーd:毎日、予・復習をする/a:モチベーション×100])に達している。しかし、教師がインセンティブを与えると脱落率は37%(f:教師がインセンティブを与えたケース[100ーc:宿題があれば必ずする/a:モチベーション×100])となる。到達レベルの高い生徒ほど誘因効果[(100ーf:教師がインセンティブを与えたケースーd:毎日、予・復習をする)/e:自主的学習のケース×100]は高くなり、共同研究に参加した高校での「宿題の与え方」は家庭学習の成立と持続に対して寄与していると言える。
 具体的な学習活動について生徒たちはどう考えているのだろうか。数学について、解けない問題に出合ったとき「20分以上考える」生徒は39%であるのに対して、「先生や友人にたずねる」は55%に達しており、自分で「考える」生徒が上回っているのは学力到達レベルAのみで「考える学習」の定着率は低い水準にとどまっている。
 英語については「単語や文法を覚える」という最も基礎的で、それ故ある程度の強制を伴う項目を取り上げたが、「とても必要」だと61%の生徒が答え、「ある程度」を加えると96%の生徒が肯定している。
 基礎・基本は強制を伴わないと定着しない場合が多いのだが、英語に関する限り生徒はこれを拒否しているわけではない。グローバル化社会の中で生きるという将来展望とのかかわりで、英語学習の必要性が共有化されているから「納得」しているのだろう。

図4 インセンティブの効果

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