VIEW21 2001.06  特集 授業と家庭学習の連結を考える

 かつて、基礎・基本の習得は「当然やるべきこと」として教師の指導に従っていたが、最近の高校生は「納得しないとやらない」のだ。生徒たちの「納得」とは何だろうか。「到達点」を示し、どんな「効果」が得られるのかを分からせると「自分にとって大切だから学ぶようになる」と複数の教師が指摘する。言い換えると、生徒が「押し付けられている」と受け止めると学習行動から離脱するのだ。教師が生徒の将来を考えて「かくあるべき」と指導しても「将来」を考えていない生徒は反応しにくくなっている。
 とりわけ大学入試での競争原理が働きにくくなっていることを考えると、学びの行動をとりにくい生徒に「かくあるべし」と語ることはますます難しくなっていくだろう。
 一人ひとりの生徒に「納得」させることは、教育条件の整備を前提にすれば望ましいことなのだが、教師の多忙さを考えると現実的な施策だとは思えない。生徒に目線のいっている教師ほど「困っている」のは「個々の生徒に対応する時間的ゆとりがない」(67%)、「生徒の進路意識が低い」(57%)で、多様な進路をとる生徒が多い学校ほど悩みは深い。
 「何をしたらよいのか分からない」生徒たちに、「なりたい自分」を描かせ、自己実現に近づくため「何を学ぶと、どうなるのか」といった到達点を示さないと、学びへの意欲を行動に誘うことが難しいとの共同研究校の先生方からの問題提起があった。この指摘は、教育現場が生徒の意識変化によって学習の再定義を迫られているということである。
 教科カリキュラムの大枠については、先に指摘しているように収斂しているようであるし、週5日制は現状では一部の私立高校を除いて定着しそうである。そうだとすれば、授業時数の縮減は避けられない。この反面、国立大学の一部でセンター試験5教科7科目や、個別学力試験を含めて理科3科目を課す動きもある。

生徒の実態を踏まえた指導がますます重要に

 このような高校教育を取り巻く環境変化に対応する方法は「生徒が自由に使える時間」をどのようにして学習活動に結び付けるかというテーマに集約されることになる。ここに、生徒の自宅における生活行動の実態を踏まえた対応策が求められている理由がある。
 図5は、休日に自宅で何をしているかを調べたもので、60分以上の時間をかけている項目の中で注目されるのは「b:友だちと遊びに出かける(79%)」で、「a:家で勉強する(70%)」より大きく、特に4時間以上もこれに充てている生徒が62%に達している。「c:友だちと電話で話す」や「d:ただボーっとする」は60分未満のケースが多く、必ずしも家庭学習の支障になっているとは言えない。したがって、家庭学習の定着にとって最大のネックは「友達との遊び」だと言える。
 そこで、高校生は自宅でどの程度の時間を勉強に充てているのかについて検討してみる。休日の場合、90分以上勉強している割合は、国語:10%、数学:27%、英語:33%、平日の場合、60分以上勉強している割合は、国語:15%、数学:42%、英語:49%で、まとまった時間を用いて勉強している生徒は少ない。

図5 休日にしていること

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