VIEW21 2001.09  英語教育の新機軸

英語教育の新機軸

全国英語教育研究団体連合会

語彙、文法の定着が
コミュニカティブな英語力を育てる

 実践的コミュニケーション能力の育成を標榜する新しい英語教育が、'03年度新課程からスタートする。コミュニケーション重視の傾向が加速する中、英語教育の現場はどのような課題を持っているのか。全国英語教育研究団体連合会(以下、全英連)の川島由夫先生と藤原宏之先生にお話をうかがった。

語彙・文法の再評価を

 今、英語教育は確実に変貌を遂げつつある。情報や相手の意向などを理解したり、自分の考えを表現したりする実践的コミュニケーション能力の養成を目標にした新しい英語教育が、教育現場にも浸透している。全英連会長の川島先生も「伝達能力を重視する英語教育の方向性は、新課程を待つまでもなく、既に高校現場を覆っています」と語る。
 「新学習指導要領に言う『積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や能力』とは、『聞く』『話す』だけでなく、4技能を駆使して主体的に情報や意見をやり取りする力であって、今後はこの力を生徒に身に付けさせなければならないと思います」(川島先生)
 また近年、中学校ではリスニングとスピーキング中心の授業を行うようになり、そのため『話す』『聞く』力が、従来より優れている生徒が増えてきたという。その反面、語彙、文法の力が弱い生徒が増えていると藤原先生は指摘する。例えば、高校1年生のあるクラスで『beautiful』を書かせると、正しく書けない生徒が半分近くいた。地道な繰り返しによる学習が敬遠されるのか、文法などの基礎ができていない生徒が多くなっている。
 「英作文を書かせると、三単現のsをいつも抜かしたり、文の中の時制が一致しないケースがよく見られるようになりました。彼らにとっては“細かいこと”で、お構いなしなのでしょう。でも、現在形も過去形も関係なく文を書いていては、自分の言いたいことが的確に伝わるはずがない。そして、そんないい加減な英語では、伝えたい情報を伝えられないだけでなく、他人が発する情報も正しく受け取れません」(藤原先生)
 語彙や文法のレベルの低さは、円滑なコミュニケーションを図ろうとするときに大きな障害になり得る。そして、語彙や文法の力を高め、定着させていくには、やはり繰り返しの練習が欠かせない。
 「私自身、生徒が中学校で身に付けてきた力を伸ばしてやりたいと思っています。しかし『これはいくらか?』『駅までの道順は?』といった簡単な情報のやりとりならともかく、高校生らしい知的なコミュニケーションを図ろうと思ったとき、限られた語彙ではやはり難しいですよね。また、生きたコミュニケーションでは、相手が思いがけない反応をすることもあります。それに柔軟に対応できるのが実践的な英語なのです。そのためにはしっかりした語彙力、文法力が必要です」(藤原先生)


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