職業研究 ■part 3■ 職場訪問
「働くこと」をダイレクトに実感する取り組み
職場訪問は生徒の進路意識にダイレクトに訴える取り組みだ。調べ学習ももちろん大切だが、資料を読んでレポートにまとめるだけでは、その仕事の生きた姿にまでイメージを膨らませるのは難しい。生徒の進路意識をさらに高めるための取り組みとして職場訪問を取り入れたい。学校という狭い世界しか知らない生徒が、社会と直に接する機会になる。
訪問先はアンケートを取って生徒の関心を吸い上げた上で、文理のバランスの取れた、幅広い種類の職場を設定したい。同窓会、保護者や教師の知人などを頼って探すのが一般的だが、一人の教師だけで探すのは難しいので分担して行う。
せっかく訪問しても、決められた見学ルートを回り、説明を一方的に受けるだけでは、体験的学習とは言えない。訪問先との打ち合わせの段階で、生徒による職場の人へのインタビューや、生徒が実際の仕事を体験できる機会を設けてもらえるようお願いしたい。多人数で行くとそのような場を作るのは難しいので、生徒を小人数のグループに分け、それぞれが別の職場を訪問するよう計画を立てる。
承諾を得たら、先方の担当者と日程、参加人数、体験内容、当日の服装、集合場所などを詰めていく。生徒の参加意識を高めるために、生徒一人ひとりに挨拶状を書かせる方法もある。
事前に会社案内を入手したり、インターネットで検索したりして訪問先の業務の概要などを調べておく。事前学習の内容はレポートにまとめさせ、冊子にすると便利だ。当日携帯できるほか、調べた内容を共有化でき、事後研究にも活用できる。
効果が大きい職場訪問インタビュー
当日、訪問先では生徒主体の場にすることを心掛けたい。職場の人へインタビューを行う場合は、代表者を決めておき、司会進行をさせるとよい。生徒の態度がぎこちないと、つい助け舟を出したくなるが、指導や注意は最小限にとどめる。
インタビューは業務についてだけでなく、「なぜその職業に就いたのか」「その仕事の大変なところ」「その仕事をやっていてよかったと思うとき」など、その人の仕事に対する考え方が感じ取れるものにする。また「その職業に就くにはどんな道筋をたどることが必要か」「どんな勉強がその職業に役立つか」など、生徒の進路決定に役立つ質問もさせるとよい。質問内容は事前に決めておく。
訪問後、自分の興味と訪問先の仕事内容とのずれを感じた生徒には、そのことに気付き、「働く」ことを実感できた点で意味があることを理解させる。
事後研究では、職場訪問から学んだこと、進路選択を考える上で役に立ったこと、訪問先からの回答、事前研究の内容などを総合してレポートを書かせる。調べ学習同様、冊子にしたり、発表会を行うと生徒の意欲を高め、内容を共有化できる。
●次号では、引き続き大学、学部・学科研究を通した「選択力」の育成について考える。
職場訪問実施のstep
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step1 ● 訪問先を決定
- ・文系・理系のバランスを取った様々な種類の職場を設定
- ・訪問先は同窓会、保護者や教師の知人などを頼って探す
- ・一人の教師が行うのは大変なので、複数で手分けして行う
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step2 ● 相手先と打ち合わせる
- ・職場の人へのインタビューや、仕事を体験させてもらえるよう依頼する
- ・先方の担当者と日程、参加人数、体験内容、当日の服装、集合場所などを確認する
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step3 ● 事前学習
- ・会社案内を入手したり、インターネットで検索したりして業務の概要などを調べさせる
- ・事前学習の内容はレポートにまとめさせ、できれば冊子にする
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step4 ● 職場訪問当日
- ・生徒の主体性を尊重するために、指導や注意は最小限にする
- ・仕事の内容だけでなく、進路決定にも役立つ質問をさせる
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step5 ● 事後研究
- ・職場訪問から学んだこと、進路選択を考える上で役に立ったことなどを中心にレポートを作成
- ・冊子にしたり発表会を行えば、生徒間で内容を共有化できる
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