職業研究 ■part 2■ 講演会
いろいろな分野、職種から講師を選ぶ
講演会は、社会人の生の声を聞くことで、ぼんやりとしていた「働く」というイメージを、具体的なイメージへと思考を広げる絶好の機会だ。たとえ1回の講演で生徒に大きな変化が現れなくても、生徒が将来について考える種を蒔くことの意義は大きい。講演会に限らず、進路指導は1回で効果が出ることは少ないが、徐々にその効果は現れてくるはずだ。
講師の人選にはある程度のバリエーションを持たせたい。卒業生に頼むなら、地元に根付いて生活している先輩から、世界で活躍している先輩など、生徒が様々な生き方に触れられるようにしたい。講演では、その仕事に就いた理由、高校・大学での勉強が今の仕事にどのように結び付いているか、後輩へのメッセージなどを話してもらうとよい。講演会を同窓会などの時期に合わせると、卒業生の都合がつきやすいだろう。
地元企業や団体から講師を派遣してもらう場合も、いろいろな分野・企業から選ぶようにする。講演の中身は、仕事内容の細かい話より、一人の社会人として仕事のやりがいや苦労などを、具体的な仕事の様子などを交えて話してもらうと生徒の関心を呼びやすい。
また、普通科高校であれば実業高校の生徒、特に3年生に来てもらい、働くことへの意識、姿勢、将来設計などを話してもらうと、大いに参考になることがあるはずだ。大学進学を当たり前と考えている、職業意識の希薄な普通科高校の生徒の意識に働き掛けるものは決して小さくない。大勢の前で話をすることに尻込みするようなら、クラスやグループごとに分けて話をしてもらう方法もある。ただし、働くことへの意識の高い生徒に来てもらうことが前提だ。
講師にあらかじめ質問事項を送付する
講演会の準備としては、まずどの分野の講師を依頼するかを決める。生徒からどんな分野、職種の人の話が聞きたいか、アンケートを取るのもいいだろう。そして、卒業生、PTA、地元企業など、高校や教師のつてをたどって講師を探し、依頼するのが一般的だ。企業の場合、人事課か総務課を通して企画意図を説明し、依頼書を送る。
講師には、講演会の目的、話してもらいたいポイントなどを事前に伝えておく。生徒からのアンケートを基に質問事項を添えておくのもよい。給与や仕事での失敗など大人なら聞きにくいことでも、生徒の質問と断っておけば、講師は意を汲んで話をしてくれるかも知れない。
講演会が全体会でなく、分科会として行われる場合は、進路希望調査などを見て聴講した方がよいと思われる生徒に、担任が声を掛けておくようにする。また、講演から自分の進路に適した情報が得られなくても、仕事がどんなものであるか分かればそれが収穫であることを事前に伝え、生徒の講演に臨む姿勢を確認しておく。
講演が終わったら、生徒に感想文を書かせ、分科会やクラスで発表させてもよいだろう。
講演会実施のstep
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step1 ● 人選を行う
- ・卒業生、地元で活躍する人など、様々な分野や環境で働く人にお願いし、生徒が多種多様な生き方に触れられるようにする
- ・生徒にアンケートを取り、どんな分野の人の話が聞きたいかを把握する
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step2 ● 講演を依頼する
- ・卒業生、PTA、地元企業など、高校や教師のつてをたどって依頼する
- ・企業の場合は、人事課か総務課を通して依頼書を送る
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step3 ● 事前準備を行う
- ・話してもらいたい内容を箇条書きにして送付する
- ・どんな話が聞きたいか生徒にアンケートを取ってもよい
- ・出席が任意の場合、聞いておいた方がよいと思われる生徒に声を掛ける
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step4 ● 講演会当日
- ・質疑応答の時間を取るなど、相互に話しやすい雰囲気をつくる
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step5 ● 事後
- ・感想文を書かせ、分科会やクラスで発表させる
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