VIEW21 2001.09  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 選択力を育てる指導

職業研究 ■part 1■ 調べ学習
個人研究やグループ研究の特性を活かす

 生徒の多くは「働くこと」のイメージを持っていない。職業研究の前に、まず教師自身が働くとはどんなことか、体験も交えながら話をすると効果的だ。最も身近な社会人である教師自らが、「職業としての教師」について語ることは、生徒の「職業」への意識、関心を呼び起こすきっかけになる。
 職業研究に当たっては、調べる項目、方法などを具体的に提示する。調べる項目は、仕事の内容、将来性、待遇、適性だけでなく、どんな勉強、資格が必要か、どの学部・学科を選べばよいかなど、進路の道筋を調べさせることが大切だ。参考資料やホームページ、問合せ先なども紹介しておく。
 職業研究は、学部・学科研究に比べて生徒の関心が多岐に渡っているため、研究は個人単位になりがちだ。しかし、グループで進めると、研究に対して初めは熱心でなかった生徒も刺激を受けて次第に前向きになる効果がある。グループ活動を効果的に取り入れてはどうだろう。その場合、クラスを一度解体して理学、農学、人文、教育など志望ごとに生徒を分け、さらに将来就きたい職業系ごとにグループをつくって研究する方法もある。担任団はそれぞれが自分が詳しい分野のチューターとして指導するのが望ましい。
 個々に研究する場合は、あらかじめ計画案を提示させ、目的にふさわしいかチェックし、必要ならば軌道修正する。計画段階で道筋をはっきりさせ、本来の目的から外れたものにならないように方向付けたい。
 保護者に職業に関するアンケートや職業をテーマに文章を書いてもらい、研究の一助とするのもよいだろう。教師同様、最も身近な社会人である保護者の職業観を知ることで、そこから地に足が付いた進路選択につなげることが期待できる。また地域の社会人に、「仕事の内容」「職業を決めた理由」「仕事のやりがい・辛さ」「必要な資格」などについてアンケートをお願いし、職業人の生の声に触れる方法もある。
 調べ学習を職場訪問の事前学習として行う場合は、「どんな職種の人が働いているか」「その企業の経営戦略」「業界が抱える問題」「業界の今後の展望」などについて調べ、訪問先への質問事項などもまとめる。

研究成果は発表会や冊子として残す

 研究後は結果を冊子にまとめたり、発表会を行うとよい。研究成果を共有できるだけでなく、他者のレポートや発表会を目にすることで自分の考えを客観視でき、進路に対する意識が刺激される効果もある。冊子づくりや発表会開催は生徒に事前に伝え、意欲を高めておく。
 発表会では、単にレポートを読むだけでなく、模造紙に研究結果をまとめたり、写真を使うなど工夫をさせるとよい。生徒は一層熱心に取り組むようになり、さらに自分の考えをまとめて他者に分かりやすく説明するという自己表現の訓練の場にもなる。発表会とそこに至るまでの作業は、基本的に生徒に自由に取り組ませるようにする。教師はあくまでアドバイザー的なスタンスにとどまり、生徒の自由な表現を尊重したい。


調べ学習のstep
step1 ● 働くことへの関心を呼び起こす
・教師や保護者が、体験を交えて職業について話をする
step2 ● 調査計画案を提示させる
・事前に、調査内容、方法を提示する
・できれば、グループで活動させる
・保護者や地域の人にアンケートに協力してもらい、資料として提示する
step3 ● 調査内容をまとめさせる
・冊子にまとめたり、発表会を開催する。その旨は事前に伝え、意欲を喚起する
・他者の発表を聞くことで、自分の考えを客観視し、進路意識を高める効果が期待できる
・発表会では、生徒が工夫できるよう自由な表現を尊重する

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