事例3
東京都立日比谷高校の場合
同校は'02年度から45分授業の実施を決定し、同時に「土曜日に学校の自習室を開放する」という取り組みを検討している。その概略は本誌6月号でも既に紹介しているが、その後行われている同校の取り組みを追った。
自主的な「学び」を支援する「PUSH」の場に
週5日制の「ゆとり教育」の中で、生徒が自ら様々な学びの機会を得ていく支援をしたいという思いで発足したのが、同校の「土曜日開放委員会」である。学校と保護者が知恵を出し合い、今年6月より「土曜日の自習室開放」の試行が始まった。今年度内に計14回試行する予定だが、現状では左上の資料に示す形で運営がなされている。同校の内田和博教頭は「この取り組みは『授業の補充』ではない」と強調する。
「週5日制の中で、学校として何ができるかを考えた結果です。あくまでも『生徒が土曜日にすること』の選択肢の一つであり、活用するかどうかを判断するのは生徒自身です。生徒を勉強に駆り立て、引き上げる『PULL』ではなく、生徒自身が学びの姿勢を養うための支援をする『PUSH』の場なのです」
卒業生とのつながりを活かす「サポートティーチャー」
自主参加した生徒からの「自習室」への評価は予想以上に高く、学校としても'02年度実施への手応えは十分のようである。その最大のポイントは「サポートティーチャー」(以下、ST)の存在にあるようだ。「自習室」は休日の土曜日開催なので、同校の教師が直接的に生徒を指導することはない。その代わりにSTと呼ばれる現役大学生12名が生徒の質問にきめ細かく対応するなど、その自学自習を力強く支援している。
STは同校の卒業生のなかから、高い教科力だけではなく、人間的にも高校生に好影響を与えることが期待される人物を、教師が個別に声をかけ、PTAに推薦している。生徒からすれば、憧れの志望校に通う先輩から直接様々な話が聞ける好機とあって、進路相談や、時には人生相談を持ち掛けることもあるらしい。
「人として魅力的であるということが大きいですね。生徒にとっては自習室で先輩と話ができるのが楽しみなようで、部屋のあちこちで熱心に話し込んでいます。STにしてみると、教科面の助言に個別相談、さらに終了後には報告書の提出など、割に合わないと思います(笑)。しかし、高校の後輩のために役立てるならと全力で生徒に向き合ってくれています」(内田教頭)
同校が培ってきた在校生、そして卒業生との絆が学校の力として活かされている好例と言えるだろう。
教師に与える好影響が新たな学校の活性化へつながる
教師自身も「自習室」で生き生きと課題に取り組む生徒の様子に良い刺激を受けているようである。生徒の学びへの興味や関心、自発的な「やる気」を引き出すことができれば、もっと積極的な学習が可能だと改めて感じたとの声も上がっている。
「将来は学校と家庭、地域社会が一体となって生徒を育成できる体制の構築が必要です。その体制が確立するまでの過渡期は三者が協力して、それぞれができる最大の努力を生徒のためにすべきだと考えています」(内田教頭)
限られた条件の中で創意工夫し、生徒の学力のみならず、学ぶ姿勢をも育てようとする同校の取り組みは、今後検討を進める学校においてもヒントとなるのではないだろうか。
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「自習室」の取り組みの概要
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- 学校敷地内にある同窓会館を利用
- 開放時間は9時~12時30分
- PTA主催の取り組み
- 費用はPTA会費より支出
- 学校からの人員派遣なし
- PTA役員を中心に、毎回5~6名の保護者が交替で運営にあたる
- 生徒の入退室は自由
- 平均30~40名の生徒が参加
「自習室」の名称通り、学習形態は各生徒が持参した教材による自習であるが、一部の保護者からは授業形式か、少なくとも課題プリントを準備してほしいとの声もある。
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