VIEW21 2001.09  新課程への助走
 週5日制に向けたカリキュラム編成の試み(1)

見えてきた課題を踏まえ新たな深化へ

 85分授業にはメリットがある反面、いくつかの課題もある。例えば、教科によっては1時間半近い長時間での授業に不向きなものもある。特に現代文や地歴・公民はかなり厳しい。演習がなく座学中心の授業だけで毎週やっていくと、生徒は集中力を欠き、教師もメリハリをつけるのが難しいという状況に陥りがちになる。こうした教科特性の問題は、より良い効果を上げるための、今後解決すべき大きな課題である。
 また、85分授業であることが、非常に有効であると評価されている実技教科についても、運用面での問題がないわけではない。家庭科で家庭経営室と食物実習室という2つの教室を2時間目で使うと、1学年8クラスあるのに週5回しか85分授業を設定できない。やむを得ず5・6時間目の2コマで履修しているクラスもある。体育など他の実技教科についても同様の問題が生じている。
 先駆的な取り組みだけに実施を通して初めて気付く諸問題も少なくない。しかし、五味先生はあくまで前向きな姿勢でこう語る。
 「85分という授業時間自体、我々も生徒もこれまで経験したことがないものです。お互いに集中力が持たない場合も出てくるでしょう。その辺りも配慮して、各教師の判断で85分の中で必要に応じて休憩を入れても構わないことにしています。我々、教師一人ひとりが創意工夫をして、新たな指導スタイルをつくり上げていくことが大切だと思います。85分授業が最適だったり、45分授業が適当だったりと、科目によって違いがあるのは当然です。科目の特性や目標・課題によってうまく1単位時間の工夫ができるのが理想です。『数学はこういうねらいがあるので、この授業時間でやらせてほしい』というような要望がどんどん出てきたら、学校はもっと活性化していくと期待しています。」
 カリキュラムについて話す中で、五味先生が何度も繰り返していたのは「自分たちは兵庫高校をこれからどうしたいのか、というビジョンを明確にしないと本当の改革にはつながらない」ということだった。85分授業の導入についても、授業時間の長さが重要なのではなく、どうすれば生徒が充実した学校生活を送り、成長できるかを真摯に考えた結果であることが重要なのだ。
 将来を見据えた兵庫高校のカリキュラム構築は、今後さらに深化していくに違いない。

兵庫高校のカリキュラム

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