事例2
兵庫県立兵庫高校の場合
兵庫県立兵庫高校では'00年度から2時間目のみを85分授業とし、その他の5コマを45分授業とする非常に特徴的なカリキュラムを開始している。どのような背景から、この独自カリキュラムが決定されるに至ったのだろうか。
時間的制約の中での創意工夫の結果
同校は文武両道をモットーとし、現在でも部活動の加入率が90%を超える県内屈指の伝統校である。教務部長である五味仁志先生は「85分授業導入を決断した背景には、本校の特別な事情があります」と語る。
週5日制への対応に関しては、兵庫高校においてもかなり早い時期から検討が重ねられてきた。授業時間をいかに確保するかという観点から、多くの高校で「ぶら下がり」の検討が行われるが、兵庫高校では最初から検討の俎上(そじょう)にも上がらなかったという。同校は夜間定時制の県立高校と校舎や施設・設備を共用しており、その関係で校舎、グラウンドなど施設・設備は17時30分には明け渡さなければならない。部活動を重視する学校方針から考えると、授業終了時刻を大幅に遅らせることは難しい状況であった。また、遠距離通学の生徒も多いため、始業時間を繰り上げることも不可能であった。
つまり、65分授業×5コマ、55分授業×6コマ、といった1日の授業時間が標準の300分(50分×6コマ)から大幅に増加する選択肢はなかったのである。このような事情の中で知恵を絞った結果が、85分授業を1日1コマ設置するという独自カリキュラムである。
85分授業を導入した理由と現在の成果
現在は1日の授業時間が310分と、50分授業の時よりも確かに10分増加している。しかし、授業時間の確保だけが目的ならば、このような運用が難しいカリキュラムを選択する必然性はない。
「本校では45分授業に85分を加えたのではなく、85分授業を実施しようというところから議論を始めています。45分授業は85分授業の副産物です」(五味先生)
85分授業の最大の特長は、数学や理科、実技教科のように演習や実験・実習を必要とする教科にとっては非常に授業が組み立てやすいという点である。また、国語・数学・英語などを85分授業でじっくりと指導し、基礎学力を着実に定着させることができる。さらに、時間的余裕があることで、新課程の「自ら学び、自ら考える」の要素を先取りして授業の中に盛り込むことも可能だ。生徒の集中力が最も高まる時間帯に85分授業を配しているのも、そのための工夫の一つである。
85分授業を実施する時間を生み出すための45分授業への変更だったわけであるが、そのことによるプラス効果もあるという。
一例を挙げると、今までは始業ベルが鳴ってから出欠を確認するのが常であったが、今はベルが鳴る前に教師も生徒も教室に入り、出欠を取り、始業と同時に速やかに授業を始めることが多くなったという。
「これは極めて自然発生的なものです。教師の緊張感が生徒にも伝わっているのだと思います。45分授業になっても、50分授業の頃と遜色ない授業が行われていると思います」
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