VIEW21 2001.09  指導変革の軌跡 鹿児島県立武岡台高校

 この教科「探究」でユニークなのは、6時間を1セットとして授業を設定しているところだ。生徒は1、2時間目に大学教授を招いた授業を受けた後、3時間目はまとめ学習をし、4、5時間目に再度教授による質疑応答と授業を聞く。そして6時間目にはレポートを作成し、評価を仰ぐというものだ。高校側の担当教師は、教授の授業に生徒と一緒に出席し、3時間目と6時間目のまとめ学習のときには、教授の授業で難解だったと思われる部分を生徒にかみ砕いて説明する。このような形式の授業が1年間で5セット開設される。
 「つまり生徒は、1人の教授の講義を複数回受講できるわけです。さらに3時間目と6時間目にまとめの時間をつくることで、授業を難しく感じる生徒へのフォローもしています。また1年間で5セットありますから、全部で5人の教授の授業が体験できるというわけです。単発のイベントに終わらず、しかも高校生にとって専門的になり過ぎず、生徒の進路への興味・関心を伸ばす手法として、このやり方を考えました」

武岡台高校には
もう一つ、'00年度から着手している新しい取り組みがある。1、2年生を対象とした「総合的な学習の時間~共創」だ。
 同校の「総合的な学習の時間」は、前半(1学期)と後半(2、3学期)の2部構成になっている。まず前半は、自分史の作成や学部・学科選択に関する研究、同校OBを招いての社会人講演会など進路観を育成し、後半はコース別活動を行うことになる。「良い会社研究」「国際理解」「自然科学(いきものの世界)」などバラエティに富んだ29のコースが用意され、生徒は自らの興味に応じてコースを選択する。そして、グループまたは個人でさらに具体的なテーマを設定し、3月に開かれる個人研究発表会に向けて、調査研究を進めていく。
 「総合的な学習の時間」の総合運営を担当している山元健也先生は、その狙いを次のように語る。
 「進路学習にせよ課題研究にせよ、自分の興味のあることなら、普段受け身になりがちな生徒でも乗ってきてくれるものです。1学期の最初に行う”自分史作成“では、誕生から現在、さらに60歳までの理想の人生を表に書き込ませるのですが、私が担任をしている1年生のクラスはすごく盛り上がりました。そんなことを取っ掛かりにしながら、自分の人生を主体的に生きる力を身に付けさせるのが目的です」
 武岡台高校が始めた高大連携と「総合的な学習の時間」。どちらもまだスタートしたばかりの取り組みで、結果が見えてくるのは今しばらく先のことになる。ただ有馬一之先生は、最近進路指導室で資料探しをする1、2年生が増えてきたと感じている。進路について自発的に調べる姿勢が生徒たちに身に付いてきたということだろうか。二つの取り組みの成果は、やがて1、2年生が同校を巣立つ頃、よりはっきりとした形になって同校の教師の目の前に表れていることだろう。

写真 大学教授による授業
鹿児島大などの大学教授による授業が、武岡台高校や各大学で実施された。大学レベルの講義を年間を通して受講し、知的興味・関心の高揚を図る。



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