VIEW21 2001.09  指導変革の軌跡 鹿児島県立武岡台高校

 高大連携プロジェクトの研究主任に就いたのは中間弘先生だ。先生はプロジェクトが動き始めた当初から「面白いことができそうだ」という感触をつかんでいた。入試の難易度に左右されて大学・学部を選び、入学後に挫折してしまう生徒が少なくない。そんな生徒たちに、学ぶ内容で大学を選ぶことの大切さをきっと伝えることができると考えたのだ。
 「せっかくの取り組みなので、できれば多くの回数の授業を受けさせたいと思いました。ただし、逆に1人の教授の授業をずっと受ける形式では、専門的になりすぎてまだ興味が絞り切れていない生徒はついていけなくなる。そのバランスをどうするかが、ポイントだと考えました」
 研究開発初年度となった'00年度、まずは鹿児島大工学部と農学部の学部長を訪ね、講師の派遣を依頼した。そして、他の学部系統からも講師を探さなければと考えているところに、高大連携の話を耳にした他の大学・学部から「我々も参加したい」という申し出があったという。結局、最終的には鹿児島大の全学部の他にも、鹿児島国際大や志学館大など県内の私立大・短大もプロジェクトに加わることになった。大学教授を委員とした研究開発協議会が設置され、講師の人選などは協議会を通して行うシステムを整えた。高大連携に対する大学側の姿勢は、高校側の予想を超えて積極的だった。
 大学教授による高校生への授業は7月から翌年1月にかけて延べ31回行われた。ただし準備期間が短く、教授のスケジュールとも折り合わなかったため、単発授業が中心となった。
 「初年度の取り組みは、単発でもよいからやれるだけのことをやってみようというものです。結果、授業後のアンケートで約7割の生徒が『大学の授業・研究に興味・関心が高まった』と答えるなど、生徒の反応は概ね良好でした。一方で『授業内容が予想以上に難しかった』という生徒も半数近くいました。この点は、次年度以降の課題となりました」

そして'01年度、
大学教授による生徒への授業は、教科「探究」として本格的にスタートした。対象となるのは2年生。同校の普通科では、生徒は2年次より進路・適性に応じて人文系、外国語系、理数系にそれぞれ分かれて勉強している。教科「探究」では、人文系の生徒に対しては「歴史・文化」「地理・経済」「教育・福祉」、外国語系には「英語探求」と「アジア文化探求」、そして理数系には「工学」「理学」「農学」「水産」の各コースが用意され、生徒は自分の興味に応じてコースを選択することになった。

「探求」の実施方法、まだある参考にしたい取り組み

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