VIEW21 2001.09  指導変革の軌跡 和歌山県立那賀高校

学年に関係なく
参加できるのも、「トライ&エンジョイ」の特徴の一つだ。「それが好きだ」「やってみたい」という共通の思いを持って講座に集まるため、生徒の間に結束力も生まれる。学年の違いや、知らない人との共同作業に抵抗はなく、反対に「全く知らなかった人と知り合えて楽しかった」という意見が多い。異なる学年の生徒が知り合う場は、部活動などに限られるが、「トライ&エンジョイ」はその貴重な機会を提供する場ともなっている。
 「3年生が1年生を教えたりして、助け合う姿も多く見られます。縦割りの場合、教師にとっては、どのクラスのどんな生徒なのか全くつかめないという問題があるのですが、それを解消するために横割りにしてしまうと、この生徒間の結び付きや助け合いというメリットを削ってしまうことになる。そこが難しいところです」(湯川先生)

スタートして2年目の
「トライ&エンジョイ」は、まだ完成された取り組みではなく、少しずつ進化している。
 例えば昨年の講座は、すべて教師主導で行われたが、今年は生徒が中心になって企画した講座が生まれた。ソフトボールとバス釣りの二つで、「好きだけれど、学校にはクラブがないので、ぜひやりたい」という生徒が集まったという。特にソフトボールは、中学で部活動に入っていた3年生がコーチ代わりになって、ルール説明やキャッチボールなどの指導を行い、完全に生徒主導の講座となった。
 そのソフトボールの講座を担当した城秀憲先生は、次のように語る。
 「希望者が募集人数を大幅に上回り、40名全員を受け入れました。3年の女子生徒が4チームそれぞれで積極的にリーダーシップを取って、学年や男女を問わず指導する姿は見ていて頼もしかったです。講座終了後は、充実感からか笑顔があふれていました」
 「こういう講座がどんどん増え、最終的には、すべて生徒の主導で行えるようになるのが目標です」(川口正宏先生)
 また「トライ&エンジョイ」は、新課程へのヒントになり得る取り組みでもあるという。
 「講座を担当することで、教師は教科以外の授業についても自信を持つことができます。'03年度から始まる『総合的な学習の時間』に向けて、この取り組みで先生方が培ったノウハウは必ず活きてくるはずです」(實宝教頭)
 「トライ&エンジョイ」を通して、「総合的な学習の時間」実施への土台が、徐々に固まりつつあるようだ。
 「ビジョン21委員会」を中心に、新しい那賀高校が今、形づくられようとしている。その重要な一部分である「トライ&エンジョイ」は、生徒にも教師にも、無形の財産を残す取り組みだ。その財産が、那賀高校をより一層輝かせていくだろう。

写真 花瓶敷きや壁飾り、コースターなどを作る生徒たち
各家庭にある畳の材料を使って、花瓶敷きや壁飾り、コースターなどを作る生徒たち。講師の岡正造先生は、畳屋という実家の家業から、この講座の開講を思い付いたという。



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