Step 4
他校訪問、事例研究
校外の知恵を吸収するためには直接顔を会わせる他校訪問が有効
――自校の「総合学習」をより深めていくためには、他校の検討プロセスや、取り組み状況を参考にすることも必要ですが、情報収集に際しては何に留意すべきでしょうか?
城本 もちろん、自分たち自身で深く考える時間も大切ですが、「総合学習」のような新しい取り組みの場合は、可能な限り学びの場を外に求め、新しい試みを行っている学校へ積極的に訪問する方が効果的だと思います。「今はインターネットもあるし、電話などで情報交換もできるではないか。わざわざ予算と時間を使って他校訪問をしなくても」という声も聞きますが、足を運び、自分の目で見て、直接話を聞くことによってのみ得られる情報も少なくありません。同じ想いを抱えた教師同士が、膝を突き合わせて本音の部分の情報交換をすることで、質の高い、そして誰にでも理解できる取り組み活動のヒントが得られ、次に実行すべき内容が絞れてくるものです。
実りある他校訪問のためには、事前準備(特に先方との打ち合わせ)を入念に行うことです。また、訪問はなるべく複数の人間で行きたいものです。一人、二人で行っても自校への還元率は高くありません。三人、四人で行けば、複数の目で見ることができ、また帰ってから一人ひとりがその成果を周囲の多くの教師に伝えることで校内への浸透がぐっと深まります。訪問は一校当たり、最低でも半日、できれば1日じっくり時間をかけて学びたいものです。2時間程度の駆け足訪問ではなかなか本当のところは分からないですね。
薄 他校訪問を頻繁に実施することは予算面や、校内業務の都合などもあり、なかなか難しいものですが、教師にとって他校の教師の頑張っている姿を目の当たりにし、見習うべき点を吸収するのは非常に良い刺激になります。意識の高い教師の情熱、意欲を感じ取ってくることが、他校訪問の最大のメリットだと思います。形や方法論だけ真似しても、実践している教師の熱意やエネルギーを感じ取ってこなければ、「仏作って魂入れず」になりかねません。
また、訪問の対象は高校だけとは限りません。地域の中学校がどのような「総合学習」に取り組んでいるのかを調べ、十分に把握しておくことも大切です。せっかく他校訪問をして、そのいいところを取り入れても、肝心の地元中学校の取り組みに無頓着では、入学してくる生徒の意識レベルに対応した有効な手だてが講じられない恐れがあります。
Step 9
保護者への説明、学校外部の巻き込み
保護者の理解を得ると同時に人材として活用する
――「総合学習」に力を入れていくことが、大学進学の阻害要因になるのではないかという不安は保護者にもあるようですが?
薄 「総合学習」の目的、内容を保護者にきちんと説明することは非常に大切なことです。日本の公教育に今まで欠けていたのは、学校教育の骨組みである教育課程を、保護者に分かりやすく説明するということです。加えて、「総合学習」の場合は本校ではこういう独自の取り組みをしますと説明し、理解を得ることが必要です。保護者の理解、支持を得ることは、地域の人材活用の点からも効果が期待できます。保護者の中には専門家や多方面の技能を持った人もいますから、教師だけでは指導しにくい分野について、強力な支援を得られることもあるでしょう。その結果、「総合学習」に幅と深みのある、しかも社会の生きた課題と結び付いた内容を盛り込むことができると思います。変化が激しく、グローバルな時代状況であればあるほど、すべてを学校の中だけでやりくりしようとするのではなく、校内に欠けていることは遠慮なくアウトソーシングする。そういう意味でも開かれた学校づくりが求められているのでしょう。
城本 保護者は学校が生徒をきちんと出口まで導いてくれるか、言い換えれば、志望大に合格させてくれるか、に対してやはり大きな関心があるものです。「総合学習」という新しい取り組みが導入されることで、生徒や保護者にとって、より望ましい教育が実践されていくのだということを丁寧に説明する必要があります。そして、「総合学習」で学校がどう活性化していくのか、そのために教師一人ひとりがどれほど頑張っているかが伝われば、学校の求心力は今まで以上に高まると思います。教師と保護者の一体感が生まれる良い機会と考えてはどうでしょうか。
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