VIEW21 2001.09  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

大学の構造改革の背景

 '01年の6月下旬に「大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プラン」(表1)が示された。このプランは経済財政諮問会議に提出されたものであるが、大学の構造改革について考えるためには長期低迷する日本経済の再生論を念頭に置く必要がある。そもそも大学の構造改革については、かなり以前から中央教育審議会や大学審議会で議論されてきた。そのことがはっきり具体化されたわけだが、ここへ来てこれだけスピードアップしたのは、産業の構造改革を行うためには教育改革や大学の構造改革が欠かせないという経済界からの要望が強かったことも大きな要因になっている。
 この「構造改革プラン」と同時に、「大学の構造改革の方針」(図1)が示された。「構造改革プラン」の中の「評価に基づく競争原理の徹底」と「国立大を民の発想を生かした新しい経営システムへ転換」を、さらに具体的に、「国立大の法人化により民間的発想の経営手法を取り入れ、同時に国立大の再編・統合を大胆に進める」、「大学に第三者の評価システムを導入し、大学間の競争を促す」という柱でまとめたものである。これらの方針の中に示されている具体案のうち、国立大の独立行政法人化の問題については一部の国立大が反対しているし、トップ30大学構想に対しても異論は少なくない。しかし、あえて方針と具体的なプランを確認することで、高校現場で大学改革をどう捉えていけばよいかの参考にしていただきたい。ここでは、まずこの「大学の構造改革の方針」を確認し、次に「世界に通用するプロフェッショナルの育成」や「社会・雇用の変化に対応できる人材の育成」のための具体策として現在検討されていることのいくつかを紹介する。

構造改革プラン
図1 大学の構造改革の方針
  1. 国立大学の再編・統合を大胆に進める。
    ●各大学や分野ごとの状況を踏まえ再編・統合
    ・教員養成系など→規模の縮小・再編(地方移管なども検討)
    ・単科大(医科大など)→他大学との統合など(同上)
    ・県域を越えた大学・学部間の再編・統合など
    ●国立大学の数の大幅な削減を目指す
    →スクラップ・アンド・ビルドで活性化
  2. 国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。
    ●大学役員や経営組織に外部の専門家を登用
    ●経営責任の明確化により機動的・戦略的に大学を運営
    ●能力主義・業績主義に立った新しい人事システムを導入
    ●国立大学の機能の一部を分離・独立(独立採算制を導入)
    ・付属学校、ビジネススクールなどから対象を検討
    →新しい「国立大学法人」に早期移行
  3. 国立大学に民間的発想の経営手法を導入する。
    ●専門家・民間人が参画する第三者評価システムを導入
    ・「大学評価・学位授与機構」などを活用
    ●評価結果を学生・企業・助成団体など国民、社会に全面公開
    ●評価結果に応じて資金を重点配分
    ●国公私を通じた競争的資金を拡充
    →国公私「トップ30」を世界最高水準に育成
文部科学省(2001年6月発表資料より)

<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.