学力を構成する4つの要素
まず、学力を向上させるための構成要素を考えてみる。通常、学力を構成する要素として考えられるのは「学習時間」と「学習方法」である。学習時間を確保しなくては学力の増進はおぼつかない。しかし、時間ばかりかけても効果が上がるとは限らない。効率的な学習方法を取っているかどうかが重要である。中学校の指導の変化や塾の台頭により、自発的な学習スタイルを取れない生徒が高校で増えており、自宅での学習習慣の確立は重要な問題である。
これに加え、近年学力向上のための構成要素として重視されているのが、生徒に対する「学習への動機付け」、生徒の側から言えば「学習の目的意識」の醸成である。「何のために学ぶのか」が十分に認識でき、やり方が分かれば生徒は学習する気になるであろう。
そして最後に、生徒自身の「人間的成長」が伴わなくては真の学力は育たない。よく先生方からお聞きするのは、「通常の学習で偏差値60くらいまでは伸びるが、生徒の人間的な成長が伴わなければ、それ以上は伸びにくい」ということである。例えば、国語や英語の小説系の入試の文章を読むためには、人間の心の機微に対する深い洞察がなければならない(この人間的成長が、後述するように鍵となる)。
以上の4つの要素が学力の構成要素であり、簡単に式に表すと、図1のようになる。
学力とは、生徒の入学時から現在までの面積で表すことができ、学習時間・学習方法・目的意識・人間的成長の4つの積で表せると考えることができる。どれかが弱い時には別の要素を強くしてやればいい。例えば、多くの学校で進路学習に力を入れているのは目的意識を向上させるためである。教育の本来の目的は「なりたい自分になるための手助け」である。そのためにまず、進路学習によって「なりたい自分」を明確にイメージさせることが学習の目的意識醸成にとって不可欠なのだ。
<前ページへ 次ページへ>
|