VIEW21 2001.09  特集 国際化を視野に入れた進路観の養成

修学旅行などの校内行事を学力向上に利用する視点

 生徒の学力向上のためには、単に学習時間を確保するだけでなく、4つの要素に目を配り、バランスの取れた学年経営を行っていく必要がある。その点で、今後積極的に利用していきたいのが、「総合的な学習の時間」と、様々な学校行事、特にオープンキャンパスなどの利用や職場訪問、修学旅行などである。
 例えば、「総合的な学習の時間」において進路学習を行い、修学旅行を「進路観養成の実践の場」として位置付け、企業訪問や大学訪問をプログラムの中に入れようとしている学校が増加している。将来自分の進路先になるかもしれない場所を見学させることでリアリティーを持たせるという狙いである。本稿に続く事例では、海外の日系企業に勤める日本人を訪問することで、「国際化を視野に入れた進路観の養成」を狙いとした岡山県の邑久高校の取り組みなどを紹介している。
 また、「総合的な学習の時間」を課題学習に利用する場合は、本来の学問の在り方を垣間見させるという視点が有効である。生徒が学習意欲を失うのは、「数学の公式を何のために覚えなくてはならないのか」といった学習の目的感の喪失が理由の一つに挙げられる。つまり、教科の学習・習得自体が目的となってしまって、その先が見えないことが教科学習への興味を失わせているのだ。課題学習を上手に利用すれば、教科で学んだことを「道具」として利用して、実践的なテーマに至る体験をさせることができる。このことで、教科学習の必要性を感じさせ、大学進学の先にある本来の学問への興味を喚起することができる。この場合でも、修学旅行を課題学習の実践の場に位置付けることが可能である。

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グループになってシンガポールの街を歩く(岡山県立邑久高校)

進路観の養成に「国際化」を取り入れるメリットとは

 近年、海外修学旅行を行う学校が増加している。'98年のデータでは、全国の高等学校の約17%が海外修学旅行を実施しているという。私立高校に限って言えば、約3割が海外に行っている。海外修学旅行を行うことのメリットとしてすぐに思い浮かぶのは、次のような点であろう。
(1)生徒の視野の拡大
 国際化社会となっている現在の日本を実感させ、生徒の視野を拡大させることができる。
 例えば、地元から海外に進出している企業の事務所や工場を見学するなどが考えられる。
(2)英語学習への動機付け
 英語を(アジア圏の国々でも)コミュニケーションの道具として使うことで、英語学習に対するモチベーションを高めることができる。
 このような表面的に見ることのできる効果の他に、海外修学旅行や語学研修などの海外・異文化体験は生徒の人間的成長を促すきっかけにすることができる。

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言葉だけでなく価値観の異なる他者と交流する(邑久高校)

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