VIEW21 2001.10  今日と明日の活力をもたらす創意工夫
 学校活性のヒント 山形県立長井高校

情報の共有化に模試をフル活用

 紙上面談は3年生の8・11・12・1月と計4回行われ、特に追い込みの時期に入る11月では、9~10月に行われる進研模試などの結果を活用して、より緻密な指導方針が決定されていく。「紙上面談でクラス担任・進路・教科担任が生徒情報を共有して指導の方向性が明確になれば、必要な資料も分かってきます。大切な追い込み時期に具体的な話を効率的にできますから」(吉田先生)
 生徒が納得できる面談を行うためとは言え、ここまで入念に事前準備をし、コンセンサスを得ていくことは容易ではない。しかもこうしたきめの細かさは、紙上面談→個別面談の流れだけにとどまらない。1学期から模試のデータをフルに活用し、過回との対比、他校との比較などはもちろん、得点分布がどう推移しているか、教科ごとのバランスはどうかクラスごとの特徴まですべて分析するという。
 「その資料を朝会のとき全教員に配付して、学年の状況について理解を得ます。本校では学校全体の状況や学年ごとの違いを全教員が理解できるよう、学年割りではなく1~3学年を通した教科指導体制にしていますが、こうして理解を得ていくことで、直前の小論文指導など全校的な生徒の支援態勢が整えやすくなります」(渡辺先生)
 この分析データは、講習の指導内容や教科の時間配分の修正用資料となり、数学や英語の弱点補強プリントの作成時にも活用する。さらにほぼ毎月行う学年集会の際には、生徒に発信する内容を進路指導課と各学年との間で話し合う上での材料として役立てる。それぞれの学年が持つ特性や模試の分析データを加味したシナリオを、担任の意見を集約しながら作成するという。「本校の生徒は教師の言葉を驚くほど正直に受け止めます。だからこそ、何をどう話すかについて事前に十分検討することが非常に大切なのです」(吉田先生)

生徒への熱い思いを力に

 「卒業生が訪ねてきたとき、『卒業して初めて、先生方みんなに育ててもらったことが分かった』と言われることがあります。そういうときに最も喜びを感じますね」(渡辺先生)という言葉に象徴されるように、同校の教師が生徒にかける思いは熱い。
 教師が一丸となって頑張ることができる理由を、相田先生はこう説明する。「本校の場合、ベテランの先生と若手の先生とのコミュニケーションが非常によく取れていると思いますね。だからこそ『生徒をどうすれば伸ばせるか』を全員で一生懸命考え、十分な議論を重ねていけるのではないでしょうか」
 同校には、「(学校の近くにある)葉山が(雪が積もって)白くなる頃から長井高生は伸びる」という合い言葉がある。厳しい冬に耐えて新芽を育み続けた樹木は、やがて訪れる春に大輪の花を咲かせる。その姿を自らに重ね合わせながら、教師と生徒の二人三脚はこれからも連綿と続いていくだろう。


▼第1回ベネッセ・駿台共催マーク模試/
9月実施。大学入試センター試験への対応学力の測定を行う。'00年度受験者は33万人。
第2回ベネッセ・駿台共催記述模試/
10月実施。大学入試に必要な総合学力を記述式問題で測定する。'00年度受験者は30万人。


写真 相田喜代志 写真 渡辺浩之 写真 吉田直史
山形県立長井高校教諭
相田喜代志
Aita Kiyoshi
教職歴36年。同校に赴任して16年目。進路指導主事。英語担当。「どんな生徒にも長所はあり、それを伸ばすのが教師の役目。可能な限り生徒一人ひとりの良さを伸ばす指導を続けていきたい」
山形県立長井高校教諭
渡辺浩之
Watanabe Hiroyuki
教職歴16年。同校に赴任して8年目。数学担当。「夢を諦めてしまったらそこで終わり。投げ出さずに真面目にやっていれば、必ず良い結果が伴ってくることを生徒に伝えたい」
山形県立長井高校教諭
吉田直史
Yoshida Naoshi
教職歴14年。同校に赴任して6年目。数学担当。「話さなければお互いの思いは伝わらない。生徒とのコミュニケーションを大切にした指導をいつまでも大切にしたい」

山形県立長井高校
1919年創立。普通科の共学校。全校生徒数709名。'01年度入試では東北大をはじめ、山形大25名など国公立大に計111名合格。私立大は上智大、中央大などに合格者が輩出した。
住所/山形県長井市四ツ谷2-5-1 電話/0238(84)1660


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