VIEW21 2001.10  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 選択力を育てる指導

夢を追いつつ現実と折り合いをどう付けるか

 入試が近づいてくると、その時点での学力と今後の伸び、志望校の難易度などを総合的に分析して受験校を考えていく。生徒にとって選択力が試される重要な場面だ。
 それまでの漠然とした「志望校」から、より入試を意識した「受験校」選びの段階で大切なのは、「憧れ校」を諦めさせない指導である。たとえ合格が難しそうな場合でも、「その大学は無理だ」といった直接的な言い方は避けたい。希望を持たせ頑張らせる一方で、憧れ校を失敗した場合の現実的選択(併願校)を考えるように仕向ける。教師の側としては、生徒にどこまで夢を追わせてハードルを設定させるか、そして現実はどこまで伸びそうかの冷静な判断を持っておく必要があるだろう。
 受験直前期には、センター試験で思い通りの点数が取れた場合の第1併願パターンと、予想を下回った場合の第2併願パターンの組み合わせを考えさせる。センター試験が終わり、志望校の合格可能性判定が返ってきたら、受験校を最終決定する。判定が微妙で志望校を変えるかどうかの判断が難しい生徒の場合、過去の模試結果や校内成績、さらに教科担当の意見などを聞いて総合的に判断する。
 生徒に新たな受験校を勧める必要がある場合、生徒が納得できるように、志望校の度数分布表など客観的データを示すようにする。そして「一つの意見だが、△△大もきみのやりたいことができる大学だと思う。もちろん、最終的にはきみが決めることだ」など、教師の判断を押し付けと感じさせないように配慮する。生徒自身が納得感を持って主体的に選択することが、その後の人生における選択の場面で活きてくるのだ。面談で二者択一くらいのところまで話を詰めて、あとは生徒に決断のための時間を与える。

学部・学科研究、大学研究の総括
大学1年の夏休みを視野に入れた指導を

 大学に入学しても、卒業生とはそのまま縁が切れるわけではない。大学入学後の最初の夏休み、高校を訪ねてきた生徒の表情から、生徒が自ら積み重ねてきた選択の結果に満足しているのか、読み取りたい。彼らは大学という慣れない環境の中で、不安や緊張の生活をスタートさせている。大学での勉強や生活について、高校時代に調べたことや想像と違っていた点が出てくるかも知れない。悩みがあるとき、いつでも高校の教師に相談できる体制をつくっておきたい。
 大学が単位履修方法などを変更したことで、入学後、生徒が悩んでいることも考えられる。そういうケースでは、高校が相談を受けたり、必要ならば高校側から大学側へ要望を出すことも考える。
 在学時から、大学入学後を見据えた指導をすることも必要だろう。近年、大学の講義のレベルについていけない学生が増えている。大学に合格させる指導だけでなく、入学後必要な学力を最低限付けさせることも指導の一環だ。「大学が望む学生像」「高校生に望むこと」など大学からの要望にも応えられる進路指導が求められていることを意識して、指導に当たりたい。ある高校では、卒業生に「大学と高校の授業の違い」「高校で準備しておくべきだったこと」などをアンケートで調査し、教科指導に反映させている。
 高校3年間で様々な選択を重ねた生徒たちが卒業後、どんな生活を送っているのかを把握し、そこから選択力育成のための新たな指導の方向性を見いだしていきたい。


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