VIEW21 2001.10  新課程への助走
 週5日制に向けたカリキュラム編成の試み(2)

事例4

福岡県立城南高校の場合

 城南高校が'94年度から実施している進路研究活動(ドリカムプラン、以下「ドリカム」)は全国的に広く知られている。同校ではその成果を踏まえつつ、現在、45分授業7コマのカリキュラムを検討している。これは週5日制の中で進路研究活動を深化させ、「総合的な学習の時間」にも結び付けていくための手段だという。その経緯と今後の改革への展望について、教務主任の永岡信泰先生と、研究開発委員長の和田美千代先生にうかがった。


新課程はドリカムの進化へ向けての
千載一遇のチャンス

 「新課程に対応するに当たって最も苦心しているのは、ドリカムをカリキュラムの中にどう組み入れるか、言い換えれば、進路研究と授業との連動をどう図るかですね」と永岡先生は言う。ドリカムを通して、生徒が興味・関心を持ったことについて自ら調べ、知識や考えを深めていく習慣は定着した。しかし、興味・関心の対象が大学進学後にしか学べないとなると、普段の学習の動機付けにはつながらない。新課程に向けた取り組みは、ドリカムが生徒の学習意欲向上に直結するものに進化する絶好の機会と考えたのだ。
 同校が45分授業案を検討しているポイントを和田先生はこう説明する。
 「本校の生徒にはカリキュラムを精選するよりも、むしろ幅広く勉強させることが将来生きていく力になると考えました。50分授業で週32コマという案もありましたが、これでは部活動に支障をきたす上に、生活のリズムも乱れてしまいます。だからこそ45分授業については校内コンセンサスは得やすかったですね」
 「ゆとり」の時間は必要だが、知識の絶対量なくして本当の知恵は生まれない。同校では基礎学力の低下を避けつつ、授業とドリカムを活かした「総合的な学習の時間(以下、『総合学習』)」との融合を図っている。

さらなる改革に向け
授業と『総合学習』の融合を図る

 「『総合学習』は、各教科の中で思考力や判断力が養えるようになるための言わばお手本の時間です。問題解決学習は『総合学習』で扱い、教科の授業は今まで通りということではありません。教科指導が深まらない『総合学習』というものはあり得ないと思います。基礎・基本の容量はあまり減らさず、その代わり土日の休みを使ってしっかりと思考力を養ってもらえばいいと思います」(永岡先生)
 例えば、小論文指導も「知識を表現力に変える」というレベルにまで高めていければと考えているという。
 「生徒に『生きる力』を指導するには、教師自身が変わらなければなりません。主体的に社会の変化に対応しようとする、その教師の姿勢が生徒を変えていき、学校を変えていくのです。週5日制になり、『総合学習』が導入される今回の指導要領は、すべての学校に等しく与えられている改革のチャンスだと思います」(和田先生)
 ドリカムが「総合学習」として、学校の教育活動に反映されていくことが同校の改革の目玉である。たくさんの教科・科目を勉強し、力を付け、ドリカムで見つけた興味・関心を反映した進路の実現を支援する、つまり一人ひとりの生徒の志望に合わせたカリキュラム編成を理想としているのだ。
 「すべて準備が整ってから、という考え方もありますが、それでは社会の流れに追いつけないし、行動もできません。やはり改革にはある程度のスピードが必要です。学校の持つ力を信じることが大切ではないでしょうか」(永岡先生)
 「新しいカリキュラムをつくるということは、自分たちの自己実現、夢の実現だと思っています。『総合学習』も教師が教えるという発想ではなく、生徒と共に学んでいく姿勢が必要だと思います。主体的・自発的に学校の裁量でやれると考えれば、非常に面白いものだと思いますね」(和田先生)


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