実際に大学に足を運ぶ経験は、予想以上に生徒に大きな影響を与える。大学も、同校のような取り組みに非常に協力的になってきている。大学の提供してくれる内容が充実すれば、高校側もこれを利用し、より真剣により深く、進路を考える機会を生徒に提供できる。
「実際に足を運び、先輩と話すことで、実際に通っている大学生の様子や、講義内容、卒業後の進路先など、パンフレットだけでは詳しく分からないことを知ることができ、参考になった」(文系女子)
「大学の実態は実際足を運んでみないと分からない。大学によって校舎や実験設備がずいぶん違うことに驚いた。やはり設備の良い大学で学びたい」(理系男子)
「それぞれの大学が持つ雰囲気の違いを感じた。まだ自分の志望大は決まっていないが、この体験を今後の参考にしたい」(理系女子)
これらは昨年の研修旅行の感想を綴った「事後レポート」に掲載されている生徒の感想だ。気付きの内容やレベルに違いはあるものの、生徒たちは進路選択に役立つ情報をしっかりとつかんでいる。
宿泊研修旅行を通しての生徒の変化を、塚島先生は次のように語る。
「宿泊研修旅行を実施してから、生徒たちは大学のネームバリューだけで進路を選ぶことがなくなったように思います。医療短大、看護学校などを目指す、目的意識が明確な生徒も増え、進路選択の幅が広がりました。やりたいことが決まっている生徒は、どの大学に入学するかという入り口の部分にこだわらず、やりたいことができるという観点で進路を選べるようになりました」
一方で新たに 宿泊研修旅行をより充実させるための今後の課題も見えてきている。
「理系の場合、実験施設の見学やミニ講義が生徒に強い印象を残します。理系はさらに、生徒自身が大学の施設で実験に参加させてもらえれば、より充実した能動的な研修になるでしょう。それに対し文系は、講義を受けるだけになりがちなので、理系に比べると今一つインパクトに欠けるのです。この部分を埋める何かがあるといいのですが」と言う中井先生に、塚島先生も同意する。
「文系の生徒に対して、どのような啓発の方法があるのかは、今後の検討課題でしょう。文系の学部で学んだことが、実社会とどう結び付いているのかが分かるように、社会人になった卒業生の話をもっと充実させてもいいと思います」(塚島先生)
多田先生は、この宿泊研修旅行と進路指導を体系付けていきたいと話す。
「入学してから卒業までの進路指導の流れをより系統立てて、この研修をその中にうまく組み込みたいですね。進路実績と研修との相関関係も、取り組みを裏付けるデータとして全校で共有できるようにしたいと考えています」(多田先生)
今回の宿泊研修旅行には1年生の担任も参加している。今回得た経験を、自分の学年の活動で活かすためだ。「総合的な学習の時間」の中核となる可能性をも秘めた福野高校の宿泊研修旅行は、次なる発展へのスタートを切ろうとしている。
事前・事後学習の成果はそれぞれ冊子にまとめられる。生徒は自分の活動の成果を客観的に振り返るとともに、他の生徒の取り組みからさらに広く学ぶことができる。
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