VIEW21 2001.10  指導変革の軌跡 富山県立福野高校

 多田先生ら1年生を担当する学年団が一枚岩となって、着々と準備を進めた。そしてその年の学年末に、2年生での実施が決定した。
 「一からの企画づくりでしたから、まず各大学が実施するオープンキャンパスを利用しようと、いろいろな大学について調べ、下見にも行きました。初年度は、日程も内容もこちらの希望に合った近畿大をメインに、大阪市立大を加えて8月後半に宿泊研修旅行を実施したのです」(多田先生)
 2年目からは、その大学に在学する福野高校卒業生に話を聞くという取り組みも加えた。第2回宿泊研修旅行の企画・引率をした、進路指導主事の塚島准子先生は次のように語る。
 「卒業生に、大学で学んでいる内容、生活環境、アルバイトの様子など、ありのままのキャンパスライフを、大学を案内しながら高校生に教えてもらえないかと依頼していきました」(塚島先生)
 実施時期が夏休みということもあり、スケジュール調整はかなり難しい。今年卒業生に協力を依頼する係を受け持った鷲塚直子先生は次のように語る。
 「今年は20人の協力を得るために、最終的にはその3倍以上の卒業生に打診しました。どの卒業生も、都合さえつけば後輩の役に立ちたいと申し出てくれて。特に自身が宿泊研修旅行を体験している卒業生の中には、自分から『何か役に立てることはないか』と連絡してきてくれる人もいました」

4年前、
白紙の状態からスタートした宿泊研修旅行は、着実にその内容を深めている。2年目には、「基礎ゼミ」と称する進路意識を高揚させる取り組みを研修旅行前に実施した。基礎ゼミを通して新聞を材料に社会への関心を高め、興味ある学問の本を読むことで、その分野への理解を深める。そして、4年目の今年は京都市内の私立大を中心に、オープンキャンパスを積極的に利用した。また、宿泊研修旅行の直前の7月には行動計画づくりの他に、旅行前の事前研究として、自分たちの班が見学する大学・学部のゼミでどんな研究を行っているのか、そしてその学部を出てどんな職業に就くことができるのかなどを調べ、「大学研究」「ゼミ研究」の2冊の冊子を作成。9月には、3冊目の冊子として「事後レポート」ができる。今回、この行事を中心となって進めた学年主任の中井信一先生は語る。
 「私は研修に行く前の事前研修の段階で、目的の7割は達成していると思います。それほど事前研修は念入りに行うのです。当日は五感をフルに使って大学というものを感じてほしいですね」

写真 大学から説明を受ける
大学ではどんなことが学べるのか、直接説明を受ける。今までよりも大学が身近に、具体的に感じられるようになり、入試に向けての意欲を高める生徒も少なくない。



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