'01年8月2日、午前7時30分。前日から京都に泊まっていた富山県立福野高校2年生の一行は、33の班に分かれ、京都、大阪の大学訪問、そして同校を卒業した大学生のもとへ訪問に出掛けようとしていた。
同校では、普通科の2年生を対象に毎年8月1日から2泊3日の日程で宿泊研修旅行を行っている。4回目の実施となる今年は、約160名の2年生全員が参加した。研修旅行の最大の目的は、関西方面の大学や同校卒業生で現役大学生を訪問し、キャンパスの雰囲気を生徒が肌で感じ取ることにある。そのため、スケジュールはキャンパス訪問が中心となっている。1日目は文系、理系の2グループに分かれ、それぞれ同志社大の今出川キャンパスと京田辺キャンパスを訪問し、夜は宿舎に卒業生である社会人を招いての「進路講話~先輩は語る」を実施。2日目は小人数の班別に、より自分の希望に合った大学のキャンパスを訪問し、卒業生に会いに行く。夜は宿舎で「京都を学ぶ~京都の歴史の主役たち~」をテーマに地元の方の講演を聞く。そして3日目は嵐山、嵯峨野地区の寺社を班単位で見学する。
2日目の朝、生徒は宿舎の前に班ごとに集合した。教師が同行する班もあれば、生徒だけで行動する班もある。30班、31班の計9名が向かった大阪大医学部保健学科は、私鉄を乗り継いで宿舎から2時間近くかかる遠い道のりだ。「大阪大は総じて大学訪問などに協力的なので期待しています」と同行した中田正彦先生は話す。
大阪大に到着した一行は、まずは大学が制作したキャンパス紹介ビデオを視聴した。その後、保健学科の実習室やパソコンルームを一通り案内してもらう。介護実習で使用する教室内に設置されたガラス張りの風呂場やトイレ、車椅子の高さの台所。看護実習のための部屋には病院と同じタイプのベッドがたくさん並んでいる。高校にはない設備の数々に圧倒されて、生徒たちはただ見入るばかりだ。
大阪大の訪問を終えた生徒からは「実習する施設など、どんなところで勉強するのかが分かって、とても参考になった」「この大学は難易度が高いけれど、今から頑張れば届かないことはないと思う」「絶対にここに入って看護婦になりたい」などという前向きな言葉が聞かれた。高校とは違う大学の雰囲気に触れ、それぞれの生徒は大学への憧れをかき立てられたようだ。
宿泊研修旅行は
4年前に始まった取り組みだ。その立ち上げに尽力した多田哲郎先生は次のように語る。
「生徒の進路選択を見ていると、どうも大学名で進学先を決めているように感じていました。そこに本校の卒業生が年に何人か大学を辞めるということが続き、生徒に目的意識を持たせて進路を考えさせることができる取り組みを行いたいと考えていたのです。ちょうど同じ頃、例年行っている青少年の家を利用した宿泊学習を、どうせやるなら楽しいだけではなく、もっと生徒の役に立つものに変えようということになり、この宿泊研修旅行を行うことになったのです」
宿泊研修旅行に先立って、福野高校では事前学習を重ねていく。大学案内やインターネットなどを用いて、訪問する大学、学部・学科で学べる内容などを調べ、レポートにまとめる。
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