VIEW21 2001.12  VIEW'S REPORT 韓国IT教育事情

PART 3【おわりに】
生徒が主体的な学びを身に付けるためのIT活用を

ITを活用する、それ自体が目的ではない

 日常的にITを活用した授業を展開し、またITを媒介にして学校と児童・生徒が常に結ばれている韓国の教育現場。しかし、教師たちは言う。「使わなくてもいい授業に無理に使うことはない。ICTを教えることが目的ではないのだから」と。IT教育の環境が整ってきた今だからこそ、どんな授業を行い、どんな生徒を育てたいのかという教師としての理念が問われているのだ。
 「人間のための情報化教育が必要で、技術本位の情報化教育は必ず失敗します。日本は数年内にはインフラ面でも韓国に追いつくはずですが、そのときに技術本位、機械本位のIT教育になってはいけません」(陽川中学校/ハム ヨンギ先生)
 IT教育の拡充などを柱とする韓国の新課程の成否は、教師の意識の変化にかかっていると梨花女子大師範大附属中学校のチョウ キョンウォン校長は断言する。
 「教師の役割は知識の伝達者から、生徒の学びを促進させる支援者に変わりました。自己主導的な学習力、創意力、問題解決力の育成に生徒主体のICT教育の成果は大きく貢献するはずです」(チョウ キョンウォン校長)
 教室の中で教師が与える知識は有限である。しかし、生徒が主体的に教室以外の場でも学び始めれば、身に付けるものは無限になる。そんな新しい学びのツールの一つがITなのだ。


写真 ソン ジェシン

INTERVIEW
韓国教育学術情報院に聞く

広報・国際協力チーム リーダー
ソン ジェシン氏

この大規模な教育改革は時代が求めたものなのです

 '99年に設立された韓国教育学術情報院(KERIS)は、政府の教育情報化に関する政策の研究、教育に必要な情報・資料の収集・分析、開発された教授方法やマルチメディアコンテンツをオンラインで提供する機関です。また、「Edunet」という無料の教育サイト(www.edunet4u.net)を運営しています。韓国は今、開かれた教育社会を目指しています。「誰でも、いつでも、どこでも教育を受けられる社会」です。もちろん、その手段としてICTは欠かせません。
 韓国は日本より早く大きな教育改革を迎えました。韓国の旧教育課程を一言で言えば「education(教育)」でしたが、新教育課程は「learning(学習)」です。学習の主体は生徒です。生徒が自ら勉強し、能力を高めるのであって、教師は適宜コンサルティングやアドバイス、ガイドをする役割なのです。
 教える側は、今までとは違う役割に当然戸惑うでしょう。韓国でも新課程での教授法や評価法がまだ身に付いていない教師はいます。しかし、教師は今までのスタイルを今後変えていかなければなりません。
 旧課程と新課程のどちらが正しいかという質問はナンセンスです。どちらもその時代にふさわしい教育だからです。現代社会では創意性と問題解決能力の高い人材が求められるようになり、それに合わせて教育課程も変わっただけなのです。
 マルチメディアを効果的に活用しながら新しい時代の教育を実践できるよう、学校現場を支援していきたいと思います。


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