VIEW21 2001.12  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

高・大……高校生の大学講義受講

高い学力と意欲を持った高校生を
知の最前線が触発する

【高大連携の新しい動き】
高校生が大学の教室で大学生と一緒に講義を受ける

 大学教員が高校を訪ね、高校生に講義を行う出張講義は、近年では多くの高校で実施される取り組みになった。一方、高校生が大学で正規の講義を大学生と一緒に受講するスタイルの取り組みも現れている。生徒は半期または通年で大学生と共に特定の科目を受講し、修了後はそれが高校の単位として認定されるというシステムだ。'98年に学校教育法施行規則が改正され、学校外での学修を高校での単位として認めることが可能になったことにより、このような取り組みが実現した。
 文部科学省が'01年8月に発表した「高等学校教育の改革に関する推進状況」によると、大学(または短大)と連携して、大学での講義受講を高校での単位として認める制度を取り入れている高校は、全国で約50校に上る(表1参照)。さらに単位認定はしておらず聴講のみを実施しているケースも含めると、その数は約130校になる。
 こうした「高校生が大学の正規の講義を受ける制度」は、現状では私立大との間で行われているケースが中心だ。だが、埼玉大が埼玉県立浦和高校、大阪大が大阪府立北野高校の生徒に対して講義を行うなど、国公立大にもその動きは広がりつつある。
 この取り組みは高校側としては、生徒に大学教員による生の講義を聞かせることで、進路意識の深化や学習意欲の向上を図るという点では、出張講義と同じ目的を持ったものであると言える。模擬講義ではなく本物の講義が体験できるという点では、さらに高い効果が期待できるため、高校側の実施する意図は理解しやすい。
 しかし、大学側としては、高校生を講義に受け入れるために学内のコンセンサスやカリキュラム面での調整が必要となるなど、出張講義とは違った大きな負荷がかかる。にもかかわらず大学側がこの取り組みに積極的な姿勢を見せるのはなぜか。今回は大学側の視点から検証していく。

表1 大学での講義受講を単位認定している高校(一例)
    高校   大学(学部)
千葉県立千葉東高校 千葉大
東京都立飛鳥高校 中央大(商学部)
神奈川県立麻溝台高校 北里大
山梨県立甲府南高校 山梨大
静岡県立浜松北高校 静岡大(情報学部)
三重県立昴学園高校 三重大
福岡県立城南高校 山口東京理科大

※文部科学省「高等学校教育の改革に関する推進状況」より


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