VIEW21 2001.12  特集 高校生の学力と学習行動成立の要件

 そこで、図12で宅習の実態を平日と休日に区分してみた。3年生の平日での自主的学習への取り組み度は2年生に比べて数ポイント上昇するとは言え極めて低い水準で、25ポイントを越えるのはAレベルのみである。これに対して休日には2年生のB・A/3年生のD~Aレベルでこの水準を越え、3年生のB・Aレベルは40~45ポイントに達している。
 一方、受動的学習では誘因効果もあってC~Aレベルで50ポイント以上に達し、休日では3年生のD/2年生のCレベルに及んでいてそれなりの成果が認められる。
 自主的学習における3年生での伸びに注目すると、休日の場合下位ほど伸びが大きく、上位に向かうに従って伸びは小さくなっている。
 知的好奇心を刺激する授業を展開しても、興味と関心が勉強以外の世界(メディア)に向かう生徒が多く肯定指数60ポイントのバリアを突き抜けることは極めて困難な状況に置かれており、教育現場の苦悩を象徴的に示している。
 その反面、英語の学習で「単語や文法を覚える」といったある程度の強制を伴う学習の必要性を肯定する生徒は96%に達していることが注目される。
 学力変化に関する共同研究の結果、英語の平均正解率が2%ほど上昇したのは、高校生が英語を学ぶことの意義や価値を認め納得して学んでいる――将来、海外で活躍したり外国企業で働くかも知れないと考えている生徒は60%を越えている―言い換えると、同一化的動機付け(実用志向)という要件も働いているのではなかろうか。
 学習動機の視点からの検証は今後の課題として残されたが、「必要に迫られて学ぶ」学習はパソコン操作などのスキル学習の場合も同じことで、「実用志向」=キャリアの持つ意味や機能について学ぶ必要性が高まっているように思われる。'03年度から始まる「総合的な学習の時間」は学習経験や友達同士の学び合いの過程で、必要に迫られて学ぶ「おりていく学習」を軸に展開されようとしている。この時間を実用志向の充足を担保するものにすれば、教科学習に対して動機付けができるのではないかという構想が、総合カリキュラムの編成なのである。
 「総合的な学習の時間」は高校教育の基盤となるもので、高校生の学習意欲を学習行動に転移させ、教科学力の向上に寄与するものとしてカリキュラム化しなくては、進学を目指す高校にとっては「不要だ」とする意見が台頭してくることは避けられない。

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