秋田県の国際理解教育支援事業
国際理解の取り組みを 多彩かつ広範囲にサポート
近年、高校における国際理解教育に対して様々な支援・助成策を行う地方自治体が増えてきている。中でも、'95年度から「高校生海外派遣研修」を開始するなど、積極的な取り組みを見せた秋田県は、その後も多様な事業を展開しながら国際理解教育の一層の拡充を図り、先進的な事例を積み上げている。各事業の概要と今後の展望について、秋田県教育庁高校教育課の吉原慎一指導主事にお話を伺った。
「生きる力」の育成を目指した先進的な取り組み
社会の急速なグローバル化を受けて、全国の高校では海外修学旅行や交換留学の実施、あるいは、国内における外国人(留学生やALTなど)との交流事業などが、盛んに推進されるようになっている。
これらの取り組みの背景には、国際化時代を迎え、生徒の他者理解、及び自己理解能力を育てる必要性が高まってきたことが挙げられる。だが、教育庁の吉原慎一指導主事は、そうした能力が要求されるのは、必ずしも異文化交流の場面に限られたものではないと指摘する。
「他者とのコミュニケーションが苦手と言われる昨今の生徒たちにとって、そうした能力は日常においても重要なのではないでしょうか。ですから、実際に全く異なる価値観と出会える海外経験は、日常生活における『他者への想像力』を養う上でも貴重な機会となりうるのです」
実際、海外修学旅行や海外留学の実施を、普遍的な「生きる力」を育成する機会と考える教師は多い。
こうした高校現場の考え方に呼応する形で、秋田県はいち早く様々な支援を行ってきた。'95年度、全国に先駆けて「高校生海外派遣研修」をスタートさせて以来、'00年度に「国際交流推進事業」と「海外修学旅行促進事業」を、さらに'01年度は「高校生海外留学支援事業」をスタートさせた。吉原主事は、一連の取り組みの背景について、次のように語る。
「秋田県では、県の活性化に寄与できる人材の育成に力を入れてきました。'90年度のミネソタ州立大学秋田校の開校や、秋田ー韓国空路の開設を機に、さらに国際的視野を持ち県内外で活躍できる人材育成が重要であるとの機運が高まりました。その中で、高校生に海外体験をさせようという動きが出てきたのです」
学校単位さらに個人単位の国際理解の取り組みを支援
では各支援事業の具体的な内容とは一体どのようなものなのだろう。
「まず『高校生海外派遣研修』ですが、これは、米国にあるミネソタ州立セントクラウド大学に、全県から選抜した高校生を、24日間に渡って派遣するというものです。現地では英語集中講座やメントールとのグループ活動、ホームステイなどが行われます。県としてはできるだけ多くの学生に門戸を開きたいということで、当初は60名だった定員を、現在は80名にまで拡大しています」
'00年度から始まった「海外修学旅行促進事業」と、'01年度から始まった「高校生海外留学支援事業」も、同じく、海外へ赴く生徒を支援する事業である。
「『海外修学旅行促進事業』では、海外修学旅行に参加する生徒一人当たり1万円を補助しています。一方、『高校生海外留学支援事業』では、県が指定する団体の留学プログラムに参加する学生に対し、留学費用の半額を支給します。私は『高校生海外留学支援事業』に応募する生徒の審査にも参加していますが、中には、先の『高校生海外派遣研修』に参加し、そこで刺激を受けて海外留学を決意した生徒もいます。県の事業が、有機的に生徒を触発しつつあることを実感しています」
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