VIEW21 2001.12  VIEW'S TOPIC 秋田県の国際理解教育支援事業

 一方、'00年度から始まった「国際交流推進事業」では、学校単位での取り組みに対して支援を行う。
 「この事業は、学校側が独自に立案した国際理解のための取り組みに対し、1校当たり最大50万円の援助を行うものです。国際理解にかかわることであれば、できるだけ幅広い取り組みを支援するというスタンスにありますので、学校側も知恵を絞っていろいろなプランを考えてきます。例えば、語学研修への生徒の派遣や在留外国人との国内での交流、またJICA(国際協力事業団)の職員を招いた講演会を企画した学校もありました」

学校の特性に応じた多様な国際理解教育を

 『高校生海外派遣研修』が始まって以来7年。'00年度は延べ1000名以上の生徒が県の支援を受けた。確実に進化・発展を続ける秋田県の国際理解教育事業の将来像について、吉原指導主事はこう語る。
 「県の支援事業の目的は、あくまでも一人一人の生徒が、異文化体験によって自身の人間性をより深めてくれることです。ですから、必ずしも県の事業を通じて『留学を決意した』といった解答を引き出すことが最終的な目的ではありません。むしろ、『英語が全然通じなくて困った』といったレベルでも、できるだけ多くの生徒に参加の機会を広げていくことが一人一人の成長には大切だと考えています。一方、事業を利用する高校側には、国際理解教育をきっかけに、どういう学校づくりをしたいのか、そして、どういう生徒を育てたいのかを、改めて考えて欲しいと思います。ある学校では、国際理解教育を実践的な英会話能力の習得に活用し、別の学校では、進学意識の向上や職業観の育成に活かすといった目的の差は、当然出てきて然るべきだと思います。一連の事業を各高校が積極的に活用し、SI(スクールアイデンティティ)の確立や、その高校に応じた授業内容の改善につなげていって欲しいと思います」

秋田県の取り組みの概要
I. 高校生海外派遣研修('95年度~)
 米国ミネソタ州立セントクラウド大学へ県内から選抜した高校生を派遣、26日間に渡りESLを中心とした研修を行う。必要経費39万5千円のうち、秋田県は12万円を補助('01年度)。募集人員は当初60名であったが、'01年度は80名にまで拡大。今後さらに拡大も検討する予定。

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II. 国際交流推進事業('00年度~)
 国際理解教育推進のための事業などを実施しようとする高校に対し、1校当たり最大50万円を補助。事業内容は海外修学旅行の事前・事後研修や、外国人高校生との交流事業など多様。'01年度の支援枠は延べ20校(県立18校、私立2校)。
III. 海外修学旅行促進事業('00年度~)
 海外修学旅行に参加する県立及び私立高校の生徒に対し、一人当たり1万円を補助。使途に特に制限はない。初年度である'00年度は4校1000名に対して支援が行われた。
IV. 高校生海外留学支援事業('01年度~)
 秋田県内の高校1、2年生で、秋田県教育委員会の指定する留学支援団体の留学専攻試験に合格し、次年度の留学が決定している者に対し、秋田県はプログラム参加費用の半額を補助する。さらに、残りの半額についても希望する者は秋田県育英会から、奨学金の無利子貸与を受けることができる。

写真 吉原慎一
秋田県教育庁高校教育課指導主事
吉原慎一
Yoshihara Shinichi
'80年4月より高校で教鞭を執る。担当科目は英語。秋田高校勤務を経て、昨年度より現職。「異文化での体験は、人間への想像力を鍛えるまたとない機会です」

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