高校における〈教科指導の新しい工夫〉
'03年度新課程では各教科の指導内容そのものや、教科における学習目標が変化する場合もある。「国語」「地歴・公民」を例に、指導方法への影響を考える。
【国 語】
中学校は「活動型」学習へ移行し、 文学的文章を「読む」指導は削減
新課程における国語の指導で最も大きな変化は、「言葉で伝え合う能力の育成」のために「話すこと・聞くこと」を重視している点にある。このねらいを実現するために、中学校の教科指導はどのように変わるのであろうか。
中学校の新しい教科書の「ビジュアル化」は国語においても例外ではなく、文学的に深みのある文章をじっくりと読み込ませるような指導の時間はかなり減るものと予想される。授業形態も、調べ学習やスピーチを取り入れた「活動型」のものに移行するので、高校入学後、授業が講義形式になった場合、生徒が授業についていけずに混乱することが懸念される。そのため、授業の形式にも新しい工夫が求められる。また、授業時数の削減も切実な問題であり、中学校の教師からは「単純に授業時数だけで計算すると、新課程生の小学校~中学卒業までの学習量は、現行課程生に比べ激減する」と指摘する声もある。高校がこうした中学校の変化に対応するためには、入学時点での知識量、読解力、記述力などを正確に把握した上で指導計画を立てること、具体的には高校生としての自宅学習、特に予習の習慣をどのように定着させていくかが重要になる。
新課程生の「強み」を活かした国語の指導を
中学校での国語の教科指導の変化に対して、高校現場からは「国公立大入試への対応力を育てきれないのではないか」と、大学入試を視野に入れた教科指導に、影響が出ることを懸念する声がある。その点に関しては、どのような指導上の工夫が考えられるのだろうか。
国公立大の個別学力試験では、他人の文章を自分の立場に引き付けて理解し、それに対する自分の意見を言葉で表現する(書く)こと、つまりペーパー上でのコミュニケーション能力が重視されると考えることが
できる。
現段階での動きとして、「総合的な学習の時間」を、その力を向上させる目的で積極的に活用しようと検討している高校も少なくない。新課程の一つの成果として、調べ学習の結果発表やスピーチの原稿作成などを通じて、新課程生は短文であれば「書く」ことにも慣れていることが考えられる。高校の指導で、長い文章をまとめたり、論理的な文章を書く指導を加えることで、新課程生においても高い表現力を身に付ける可能性がある。
ただし、留意すべき点として、新課程生はコミュニケーション能力の育成という指導を受けてきてはいるものの、近年の生徒に見られる「間違えることを非常に恐れる」「言いたがらない」という気質も持ち合わせていることが挙げられる。生徒に興味を持たせ、言葉を引き出すためには、適切な教師のサポートが、依然不可欠であると言える。
表3 指導上の重点事項・事例
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古文指導上の重点事項・事例
- (1)興味付け・導入 (例)PCやVTRなど映像の利用
(2)予習・授業・復習サイクルの徹底 (例)ノートづくり・辞書指導
(3)生徒の興味・関心を次につなげる (例)調べ学習・発表
(4)体系立てた文法などの知識事項の指導 (例)小テスト・週末の課題学習
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現代文指導上の重点事項・事例
- (1)読書量不足への対処 (例)朝の一斉読書・書籍紹介
(2)筆者の主張・論点把握
(3)段落ごとの役割・関係など、細部に渡る緻密な読解
(4)生徒同士の意見交換・主張を「書く」
(5)生徒の興味・関心を次につなげる
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