VIEW21 2002.2  新課程への助走
 新課程で高校の「教科指導」はどう変わるのか

【地歴・公民】
公民の科目選択では「現代社会」が主流に

 地歴・公民の6科目の中で最も注目されるのは、単位数が4単位から2単位に半減する「現代社会」である。公民は新課程において「現代社会(2単位)」か、「倫理(2単位)」+「政治経済(2単位)」の計4単位のどちらかを選択履修する必要がある。教科指導時間が減少する中、'03年度は「現代社会」を1年生で履修させる学校が主流になると予想される。また、新課程生が受験する '06年度入試においては、国立大学のほとんどがセンター試験を5教科7科目で実施するため、「現代社会」が受験科目として選択される可能性は高くなると思われる。
 新課程では「現代社会」の内容は、(1)現代に生きる私たちの課題、(2)現代の社会と人間としての在り方生き方、の2項目に再編成された。このうち(1)は学習の動機付けや学び方の習得に重点を置き、選択的学習が導入された特徴的なものとなっている。限られた授業時数の中で、この(1)の趣旨を活かした指導を展開するためには、学校として「現代社会」をどのように位置付けるのかを明確にする必要がある

育てたい生徒像で決まる「現代社会」の指導内容

 「(1)現代に生きる私たちの課題」の指導方針には大きく分けて、次の三つが考えられる。

(a) 地歴科目の基礎知識の育成
(b) 小論文・総合学習への導入
(c) センター試験への対応


 一つ目は「地歴科目の基礎知識の育成」である。単位数減に伴う基礎的な知識の欠落は、様々な科目の指導に影響を与えると考えられる。地歴科目もその例外ではない。そうした中で、(1)の指導を通じて地歴の基礎知識を育成する方法も考えられる。例えば、地球環境問題や資源・エネルギー問題に絡めて世界の地理に触れたり、宗教や芸術から世界史に興味を持たせるなどの指導が考えられる。
 次に、「小論文・総合学習への導入」という視点から考えてみたい。新課程では、(1)の指導を「現代社会」の学習の導入的なものとして位置付けているが、逆に年度末の数時間を使って簡単なディベートを行わせたり、レポートを提出させるなどの調べ学習を行い、まとめとして位置付けることも考えられる。また、その際にインターネットを使った資料収集や、コンピュータを用いたプレゼンテーションなども導入すれば、より有機的な「総合学習」への誘いとなる。
 最後に、「センター試験への対応」としては、まず年度始めに2~3時間程度、(1)のテーマを導入として取り上げ、生徒の興味付けを図る。その後は、「(2)現代の社会と人間としての在り方生き方」を中心に政治、経済、国際という順序で原理や仕組みをしっかり理解させることに重点を置くという方法である。(2)の学習内容は「政治・経済」と共通する部分も多いので、「政治・経済」の教材も活用しながら指導を行えば一層効果的である。

 「現代社会」の指導法には、この他にも様々な指導展開案が考えられる。各校が自校の育てたい生徒像を踏まえて、学校独自の「現代社会」の指導法をつくり上げることが、新課程対応のポイントであろう。


表4 新学習指導要領が提案する現代社会の指導の流れ
 I 次の5つのテーマから、取り上げるテーマを2つ程度選択する
・地球環境問題         ・資源・エネルギー問題
・科学技術の発達と生命の問題  ・日常生活と宗教や芸術とのかかわり
・豊かな生活と福祉社会
      ↓
 II 生徒が課題を設定する
      ↓
 III 資料を収集・活用する
      ↓
 IV 課題を追求する
      ↓
 V 課題追求をまとめる

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