VIEW21 2002.2  新課程への助走
 新課程で高校の「教科指導」はどう変わるのか

新課程の指導内容を踏まえて、
'06年度入試は行われるのか

 '03年度からは、生徒の新しい力を育成するために、高校の教科指導に様々な工夫が求められることになる。しかし、高校現場には、「新課程を意識しすぎた教科指導を推進することは、現実の大学入試対応とは乖離するのではないか」との懸念がある。現行課程の教科指導を踏襲する方が、結果的に生徒の進路志望を実現させやすいというのでは、新しい工夫への取り組みも進まない。'06年度入試は新課程の教科指導を踏まえて、行われるのであろうか。


高校と大学が協力して入試改革を進めていく

 残念ながら、現段階では高校における新課程の新しい教科指導の工夫が、'06年度大学入試に間違いなく成果として反映されるとは断言できない。なぜなら現実問題として、'06年度入試問題の作問時期から逆算すると、大学が高校の教科指導の実情を正確に把握することが難しいように思われるからである。
 そのため、新課程での教科指導の内容が大学入試に反映されるためには、従来以上に大学への情報発信が重要になると思われる。
 本誌の'00年度2月号では、「静岡県の新しい試み」と題して、静岡県下の高校教師が大学入試問題を分析し、その分析結果に基づいて県内の大学と意見交換会を実施している事例をレポートした。この意見交換会は'00年から静岡大、静岡県立大、浜松医大との間で実施されている。この試みに関して、静岡県立磐田南高校進路課長の鈴木孝雄先生はこう語る。
 「'00年11月に行われた第1回の報告会では、大学側も少し構えていたところがあったと思います。なにしろ前例がありませんから、高校から大学への一方的な批判の場になるのではないかという懸念もあったのでしょうね。しかし、ただ要望を押し付けるのではなく、生徒のために双方で建設的な意見交換をしたいという高校側の願いは通じました。高校側からの入試問題への指摘に関しても、大学側は真摯に耳を傾け、会終了後には大学側から『来年はいつ開催しますか』『将来的には高校と合同で、入試問題の作問を検討してみたい』などの発言が相次ぎ、大学側が積極的に高校側との連携を進めていこうとする姿勢を感じることができました。'01年11月の第2回報告会では大学側も非常に積極的で、最初から活発な意見交換が行われました」

入試改革のためには
新課程の指導内容を大学に理解してもらう

 今後、大学にとっても学びの意欲の高い生徒の確保は最優先課題である。
 「私たちの試みは入試問題の改善が最終目的ではありません。高校と大学が連携して地域の人材育成を実現させることが目的であり、入試問題分析はその出発点なのだと思っています。教育環境が大きく変わる中、高校が何を考え、どのように生徒を指導しているのかを大学側に理解してもらう重要性は、今後益々大きくなっていくと思います」(鈴木先生)
 高大連携のさらなる深まりが、新課程における教科指導の新しい工夫を実現させる鍵となりそうだ。


 静岡県の「進学指導連絡会」が作成している【'01年度版 全国大学入試問題評価分析/静岡県内国公立大学編】の送付(無料)を希望される方は、下記まで直接ご連絡ください。
 連絡先 静岡県立磐田南高等学校(TEL/0538-32-7286)進路課 鈴木孝雄先生

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