VIEW21 2002.2  指導変革の軌跡 埼玉県立越谷北高校

今回の研修会を受け、
改めて高校入学時の指導の重要性を認識した同校では、導入期の指導法や指導体制の見直しに着手している。その第一歩とも言える取り組みが、上原先生を中心とした教育課程委員会のメンバーが進めている「新・学習のてびき」の作成である。
 「研修会でも明らかになったことですが、今の生徒を指導していくためには、学習の仕方そのものを教えることが、これまで以上に重要になります。本校では進路指導部が新入生用に『学習の手引き』を作成してきましたが、'03年度に向けて、その内容をさらに深め、基礎学力と学習習慣を身に付ける上での道標となるような、詳細な『学習のてびき』を制作しようとしています。
 現状のパイロット版には、各科目ごとの学習目標、教科書および補助教材の概要、予習のやり方、家庭学習の留意点、推薦参考書や問題集、評価の基準や進度予定に及ぶまで記載し、生徒が使いやすいよう工夫しています。先の研修会を受けて『ここまでやらなければ生徒を学びに向かわせるのは難しいのではないか』という意識は教師間に浸透しているものの、『かえって教師の自由な授業運営を妨げるのでは』という意見も依然としてありますから、作成にあたっては両者のバランスを図りながら進めていきたいと考えています」(上原先生)
 清水先生も頷く。「一定水準の授業を行うためには、指導内容や指導方法の標準化がある程度必要です。これががっちりし過ぎると、教師の自由な発想と裁量で行えるプラスαの時間が確保できなくなりはしないかという懸念もあります。しかし、そんなことを言っていられないほど、生徒の基礎学力の向上と学習習慣の定着は、最重要で、緊急を要する課題なのです」
 同校では今回の研修会を単発のイベントに終わらせず、今後とも継続的に中学校の実情を把握する取り組みを続けていく予定だという。
 「具体的なプランは検討中なのですが、今度は中学校の先生を招くのではなく、こちらから中学校を訪問して、授業を見学することも必要だと考えています。また、将来的には、中学校と高校が互いに授業公開を行って、互いの授業の在り方を評価するなどの取り組みも、実現したいと考えています。高校は中学生を受け入れ、大学へ送るだけのパイプではありません。大学への進学を希望して入学してくる生徒がその夢を実現できる場でなくてはならないのです。'03年度新課程に向けて中学校から移行してくる内容を全教科にわたって把握することや、中学校の学習で不足と思われる教科について導入教育を実施するなど、細心の準備を進めなければなりません。本校は'02年度以降も、授業時間の減少に対処するために、50分7時間授業を実施します。さらに、普通科では1クラス35人、理数科では、数学、英語、国語の授業について、1クラス20名の小人数授業を実施します。きめ細かな指導が可能になる小人数教育の実現は、導入教育の質の向上についても、大きな効果が得られるものと期待しています」(上原先生)
 もちろん、取り組みを進めるに当たっては課題もある。
 「長期的な視野に立っての取り組みを実現するためには、学校全体での取り組みにすることが重要です。また、今回は講師を探すに当たって、幸い保護者の人脈が活用できましたが、中高連携を一層深め、継続的な取り組みとしていくためには、中学校とオフィシャルなパイプを築いていくことなども必要となるでしょう」(清水先生)
 確固たるビジョンを持って、中高連携を学校改革の流れの中に位置付けようとしている越谷北高校。今回の研修会をきっかけに、同校の学校改革はどのように発展していくのであろうか。今後の取り組みが大いに期待される。

写真
取材当日、同校には付近の中学生が学校見学に訪れていた。中高連携事業には様々な形式が考えられるが、生徒同士が直接顔を合わせるこうした連携も一つの在り方だろう。



<前ページへ

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.