「'01年度も当初は出張講義の充実を軸に取り組みの再編を考えていました。しかし、生徒の『体験』を重視した就業体験学習の成功を目の当たりにしたものですから、『待っていたのではいけない。こちらから出向いていく取り組みでないと』と、当初の予定を変更して体験学習を中心に組み直したのです。また、大学の授業の本当の中身、迫力を体感させるために、模擬講義などではなく、その大学の学生と一緒に普段の専門の講義に参加させることにしました」(小倉先生)
1年次の就業体験同様、受け入れ先の理解を得ることは容易ではなかった。専門の講義への参加を希望しても「高校生では理解できないでしょう」と難色を示されるのを、「全部分からなくてもいいんです。大学の授業って高校とこんなに違うんだ、でも、高校の勉強の上に成り立っているんだ、と生徒に分からせたいんです」と、粘り強く取り組みの意図を説き続けた。
そんなやりとりを何度も続け、最終的に県内の大学・短大・専門学校、それに就職希望者のための受け入れ先である職業安定所と、全部で40か所の受け入れ先を確保した。また、県内にない学部・学科については、県外の大学に5学部・学科の出張講義をお願いした。
入学体験後の生徒へのアンケートによると、「大学の授業に興味・関心がわいたか」という質問に対し「強くわいた」「わいた」と答えた生徒の合計は91%に達した。また、「今回の体験で自分の中で変化した点がある」と答えた生徒は84%と、生徒はこの取り組みから強いインパクトを受けたようだ。また、変化の具体的な内容については「もっと真剣に進路や将来を考えていこうと思った」「勉強にやる気が出てきた」「今の学習が大学で役立つと分かった」「是非、入学したいと思うようになった」などの回答が寄せられ、取り組みが進路選択や学習に対して前向きな姿勢を養うのに大きな成果を上げたことが実証された。
同校では、この2年間の取り組みの成果を活かしながら、'03年度から導入される「総合的な学習の時間」の内容を検討する予定だ。その場合、時間枠が週1コマきちんと確保されるため、今までよりさらに充実した取り組みを行うことが期待される。'03年度の新課程を見据え、阿波高校の取り組みは、さらにその内容を深めつつあるようだ。
阿波高校 進路学習の取り組み内容
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1年次 ('00年度実施) |
2年次 ('01年度実施<予定を含む>) |
4月 |
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1日体験入学についての趣旨説明および希望先の予備調査 |
5月 |
作文「私の夢」 10年後にどんな職業に携わって人生を送っているか |
進路についての話を聞く |
6月 |
体験学習の実施について説明
進路適性検査
職業研究(1) |
体験入学先依頼、出張講義依頼
進路適性検査 |
7月 |
職業研究(2)
職業人による講演会
職業適性検査 |
体験入学希望先の本調査
希望先調査と体験入学先決定 |
8月 |
受け入れ先依頼のための職場訪問 |
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9月 |
受け入れ先決定 |
体験入学先研究の仕方についての説明
学習環境、講義内容、シラバスなどを体験入学先ごとにグループ研究
体験入学先へ派遣生徒名簿送付 |
10月 |
各職場の体験内容を聞き、体験したい職場の希望票を提出
科目「現代社会」での職業研究(I)
体験学習先決定 |
依頼状、事前研究(質問票を含む)の送付
礼法指導 |
11月 |
事前研究・質問票・依頼状の作成、発送
礼法指導
科目「現代社会」での職業研究(II) |
1日体験入学、出張講義(6・7・8・9日のうち1日)
礼状作成、送付
体験レポート作成 |
12月 |
直前指導
体験学習(13・14・15日のうち1日間)
報告書・礼状作成 |
体験入学中間報告書冊子作成と報告会を各クラスで開催 |
1月 |
体験発表会(各クラスごと) |
体験入学先で興味を持ったテーマについてグループでの課題研究(例えば、環境、福祉など) |
2月 |
就業体験報告書冊子発行(体験内容、生徒・保護者・職場のアンケート結果など) |
クラスで研究課題の冊子作成と発表 |
3月 |
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2年生での進路学習の取り組みについて報告書冊子作成 |
学問研究 |
新聞を使って、自分の興味あるテーマの切り抜きをスクラップ
(例)
1 新聞名 ○○新聞 面 17面 日付
2 内容のまとめ
3 意見・感想
上のような形式での年間を通じての活動とし、'00年度は60個のテーマをスクラップ。クラス担任と教科担任による指導を行った。 |
1年生での活動の続きとして、1月から実施。生徒が興味を持っているテーマについて、グループ研究をするための準備として、外部講師による講演会を実施する。テーマは7月が情報、11月が福祉、12月が環境、3月が国際化について。
生徒がテーマ研究を進める過程で出てきた疑問点などは、体験入学先にアクセスして指導・助言をもらう。 |