VIEW21 2002.2  特集 「教育新世紀」に向けた学校改革

 「小論文入門」が「知る・考える」を中心とした学習なら、2学期に行われる「ディベート入門」は「発表する・話し合う」の学習に当たる。
 「ディベート入門」では、あらかじめディベート係が「日本は英語を公用語にすべきである」「日本は死刑制度を廃止すべきである」などの四つのディベート論題を設定した。そして計8回の「ディベート入門」のうち、前半の4回をガイダンスと準備期間に割り当て、後半の4回をディベート演習に充てて実施した。教師には事前に豊富なマニュアルを用意し、生徒にも部活や家庭学習の合間に下調べの資料を収集するのは大変なため、論題に関係する資料をあらかじめ配付した。さらに関連書籍を図書館に置くなどのサポートも行った。
 ディベートの進め方にも工夫がある。ディベートは通常、肯定側が立論した後に否定側が反駁するというように肯定側と否定側が交互にやりとりして進行する。しかし、ディベート係の出原香緒先生はこの形式では生徒同士が、自分の考えていることを十分に話し合えないのではないかと考え、本来なら第二反駁を行う時間を、生徒がその場で思うままに議論ができる自由討論の場に切り替えた。「正直、これは賭けでした。通常のディベートならルールに従って流れていきますが、生徒の主体性にすべてを委ねる自由討論では、下手をしたら議論そのものが膠着してしまいますから」。しかし、生徒たちは教師が予想していたよりはるかに積極的だったと言う。「1学期に行った小論文学習を通じて、社会問題に興味を持ち始めていたことも大きかったと思います。生徒は話す材料と機会さえあれば、実は自分を表現したくてたまらないのだと改めて気付かされました」(出原先生)
 そして3学期、KIプロジェクトでは再び生徒たちが小論文学習に取り組んでいる。
 「ディベートを経験した後ですから、生徒たちの小論文学習に取り組む意識はさらなる深化を見せてくれるのではないかと期待しています。KIプロジェクトではこのようにいくつもの活動を重ねながら、生徒を螺旋的に高みへと引っ張り上げていこうと考えています。もちろん、他の特別活動や教科学習とも有機的に連動していく予定です」(藤崎先生)
 甲南高校の目標である「地球規模でものを考えるリーダーの育成」のために、同校の改革への取り組みはさらに加速している。

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