馬場義信教頭は検討から決定までの過程をこう振り返る。
「拙速にならぬよう、時間をかけて全員でキャッチボールをしながらつくり上げていきました。また、あまりにも教師の負担が大きくなり過ぎると判断した企画については思い切って見直しました。スタート段階では教師自身が前向きな気持ちで臨める『総合学習』にすることが大切だと考えたからです」
こうして'01年、名称も英語科の発案により「甲南イノベーションプロジェクト」(「KIプロジェクト」)と決まり、いよいよ同校の「総合学習」はスタートしたのである。
いくつもの活動を連動させ、より高い次元へ
KIプロジェクトでは「『総合的な学習の時間』研究委員会」の下に、小論文係・ディベート係・総合係が設置され、それぞれ具体的な活動案を作成している。各係(チーム)は言わば実働部隊として、20~30代の若い、学校を変えたいという有志の教師で構成されている。
プロジェクトの目標である「自己表現力」や「課題解決力」を持った生徒を育てるためには、「知る、考える、発表する、話し合う、表現する」といった段階的なステップを踏むことが必要となるが、1年生の4~6月に行われる「小論文入門」は、段階で言えば「知る」と「考える」に当たる。
小論文学習では生徒はまず2回のガイダンスを受け、次に4回のテーマ学習に入る。このテーマ学習ではテキストを使い「地球温暖化」「オゾン層破壊・酸性雨」などのテーマを学習する。生徒は社会問題について知り、考え、そして考えた結果を踏まえて、4回のテーマ学習が終わった後の小論文コンクールにおいて実際に小論文を書くのである。
このような小論文学習指導をクラス担任が行うことは、教師にとって大きな負担になりがちである。しかし同校では工夫を加えることで、その問題に対処している。小論文係の城之下純一先生は次のように語る。
「文章表現についての指導は、小論文コンクールの前に時間を設定して、国語科で対応しますので、クラス担任は小論文の書き方指導ではなく、テーマ学習の指導に専念できます。また、教師用の指導用テキストを別途、用意していますので、準備に大きな負担をかけることなく質の高い指導が可能となっています。現実的な問題として、教師の負担をできる限り軽くすることは新しい活動を円滑に立ち上げ、維持していくためには大切な視点ですから」
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