VIEW21 2002.2  特集 「教育新世紀」に向けた学校改革

 「地球規模でものを考えるリーダーの育成」は教科指導、特別活動、「総合学習」の共通目標となった。伝統的な学校行事も含め、すべての取り組みはこの目標に合致するかどうかを基準に洗い直され、再編された。
 同校が目標の実現に向けて新たに取り組んだ一例として、『甲南塾』がある。これは実社会で活躍している同校の卒業生を講師として迎え、これまで歩んできた道のりと、仕事に対する思いを語ってもらうというものだ。医者である先輩の語る真実味溢れるエピソードに強い感銘を受け、自ら病院まで講師を訪ねていった生徒もいた。また「総合学習」に組み込まれている「先輩に学ぶ私たちの進路セミナー」でも、生徒が同校の卒業生の職場を訪問する体験的活動が行われている。卒業生がクラス担任よりも年配である場合も少なくないが、同じ甲南高校で学んだ先輩、後輩として世代を超えた交流があると言う。
 「どちらも卒業生の献身的な協力なくしては成り立たない取り組みです。私は卒業生を中心とした地域の教育力を、学校教育、家庭教育に並ぶ『第三の教育力』と呼んでいます。この『第三の教育力』によって、生徒は自分の未来をリアルに思い描き、リーダーに求められる資質や態度を学び取るのです」(東校長)

じっくりと時間をかけて「総合学習」の重要性を校内で共有

 同校の改革の中核を担う「総合学習」の本格的な検討は、'99年度末、東校長が『甲南紀要』に「本校における『総合的な学習の時間』の試案」を発表したときから始まった。試案は同校の抱えている課題を分析し、「総合学習」への取り組みの方向性を示唆していた。これを踏まえて'00年度初頭に、各分掌から選出されたメンバー11名による「『総合的な学習の時間』研究委員会」が発足し、チーフに藤崎恭一先生が就任した。
 「最初は委員全員で問題意識を共有化するところから始めました。参考となる事例も少なく、文字通り手探りの取り組みでしたから、メンバー間では学校課題のリサーチを最優先しました。そして'00年度後半からは全国の先進校を訪問して研究を重ね、同年12月に最初の実施案を職員会議に出しました」(藤崎先生)
 実施計画案には小論文演習・ディベート・体験学習などが盛り込まれていた。それぞれの活動が単独で完結してしまうのではなく、互いに連動しながら生徒の自己表現力や問題解決に向けて創造的に臨む姿勢を育てるのがねらいだった。最初の職員会議では、「本当に期待するほどの教育効果があるのだろうか」と疑問視する声も聞かれた。しかし、学校改革は避けることのできない時代の要請であるという点で、同校の教師の認識は一致していた。さらに「3年生になってから小論文指導を開始しても、付け焼き刃で終わってしまう。低学年からじっくりと生徒の読解力、表現力を指導できるのなら、是非取り組むべきではないか」という意見が出され、試案は了承された。

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