VIEW21 2002.2  特集 「教育新世紀」に向けた学校改革

事例研究

鹿児島県立甲南高校

鹿児島県立甲南高校
1906年(明治39年)創立。普通科共学校。全校生徒約1200名。'01年度入試では鹿児島大143名、九州大27名、京都大3名など国公立大に308名、私立大では早稲田大に9名など多数の合格者が輩出。
住所/鹿児島県鹿児島市上之園町23-1 電話/099(254)0175


「総合的な学習の時間」を中核に据えた
教育活動への新たな取り組み

 鹿児島県立甲南高校では'03年度新課程を好機として、積極的に学校教育の改革を進めている。
 「総合的な学習の時間」を中核に据えた、明確な教育理念に基づく指導の目指すものは何か。同校の先生にお話を伺った。

教育目標の実現に向け地域の教育力も活用

 東憲治校長が甲南高校に赴任した'99年当時、校内には少なからず「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)に対する不安感や負担感があったという。しかし、東校長はあえて「総合学習」をこれからの同校の学校教育の中核に据えることを提唱した。
 「『総合学習』を教師の負担が増すとか、教科指導時間の減少になるなどと否定的に捉えていては何も生まれてきません。生徒が学ぶ喜びを実体験できるチャンスなのだと肯定的に捉え、それを活かす方法を考えるべきでしょう。教師が求めるものは生徒の変容です。『総合学習』には進学のために仕方なく学習するのではなく、学習すること自体が楽しいと言える生徒を生みだす可能性があると期待しています」
 東校長は「既存の行事を寄せ集めて、それなりの『総合学習』をつくるのではなく、甲南高校として実施する目的を明確に定め、それに沿って体系的かつ計画的に取り組むこと、その結果として生徒が大きく成長することこそが重要なのです」と断言する。そのためには「総合学習」がそれだけで完結することなく、他の特別活動や教科学習とも有機的に結び付いていなくてはならない。校内の様々な活動が個別に展開されるのではなく、同じねらい・方向を持つためには、学校全体の基本目標を設定することが不可欠となる。
 甲南高校では'00年、地域から甲南高校に期待されることは何か、それに応えるためには今後どのような生徒指導を行うべきか、という議論を徹底的に行った。その結果が「地球規模でものを考えるリーダーの育成」だった。
 「本校では長年、社会でリーダーとなる人材が輩出してきました。そして、その役割は今後も変わらないと考えています。これからのリーダーは、自分の周囲の利害だけでものごとを判断するような狭い視野では通用しません。環境問題にせよ人権問題にせよ、地球市民として判断し、行動していくことが求められます。『地球規模でものを考える』とはそういう意味です」(東校長)
 同校ではリーダーに求められる資質として「人間性」「創造性」「指導力」の三つを設定している。そのため学校の目指すべき目標は「人間理解の深い生徒」「課題意識のある生徒」「自己表現のできる生徒」の育成であると決まった。


写真 写真
鹿児島県立甲南高校校長
東憲治
Higashi Kenji
教職歴37年目。同校に赴任して3年目。「生徒が甲南で学んでよかったと言ってくれる教育がしたい」
鹿児島県立甲南高校教諭
藤﨑恭一
Fujisaki Kyoichi
教職歴19年目。同校に赴任して2年目。数学担当。「たくましく人生を切り開ける人間になってほしい」

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