VIEW21 2002.4  国際人を育てる THINK GLOBAL

知識を実生活で応用する

福本 これまでのお話の中で、「国際人」とはどういう人材を指すのか具体的に見えてきたと思います。では、高校現場において、国際人をどのように育成していけばよいとお考えでしょうか。
 やはり、自分の意見をきちんと伝えられるようにすることが「国際人」として大切なことだと思います。本校では、生徒に発表させることを大切にしています。私は英語を担当しているのですが、授業の7割は英語で行います。中でもオーラル・インタラクションを重視していて、生徒になるべく多く質問を投げ掛け、英語で自分の考えを述べさせるようにしています。もちろん英語のスピーチも行います。臓器移植や人種差別問題について自分で考えたり、調べたことをまとめて発表するのです。自分の考えを分かりやすく発表する力というのは、英語であれ日本語であれ、社会に出ると必ず必要になります。だから目線や立ち姿なども丁寧に指導するようにしています。これは、国語や社会、保健の授業などでも同じスタンスです。
吉野 本校でも国際、文化、福祉、環境など学年ごとにテーマを決め、そのテーマに沿って自分で調べ、クラスメイトとディスカッションをしながら自分の考えを小論文にまとめるという作業を、ホームルームの時間に行っています。そしてまとめたものをクラスで発表し、お互いに評価し合います。例えば福祉がテーマだったら、ボランティアをしてみる、福祉関係の職業に就いている人に話を聞いてみるなど、自分の考えをまとめていく過程を通して、生徒の内面を育てることを大切にしたいですね。
西村 国際人として活躍するためには、様々なことに積極的に参加して視野を広げていく、他者と助け合っていくことも大切です。本校は体育祭、合宿などの行事を大切にしますが、例えば体育祭のためにクラスみんなで協力して練習を積み重ね、優勝を勝ち得たクラスは、続くテストや英語検定でも良い成績を収めるのです。一つのことに打ち込むことを通して助け合い精神が生まれ、それが実を結ぶことによって自信が生まれるんですね。自分一人よりも、周囲と力を合わせた方が自分自身も成長できる。こういう体験も国際人になるための素養になっていると思います。
根岸 授業で学んだことを覚えるだけではなく、応用する力を身に付けてほしいですね。私はフランスに留学していた頃、友人に料理を振舞う機会がありました。材料を計る際計量カップがなく、「しょうがないね」と計ることを諦めようとしていたんです。するとフランス人の友人がすぐにコップの直径と高さを測り、体積を出して「これは何CCよ」と割り出してしまったのです。学んだ知識を現実の生活と結び付け、臨機応変に物事に対処できるこうした力は、考え方も文化的背景も違う外国の方とビジネスを進めていく際にも必要だと思います。
福本 本日、皆さんのお話をおうかがいしていて、国際人の定義が自分の中で変わってきたような気がします。自分の意見を発信できる、積極的にいろいろなことに参加し、体験することによって自信を付けるといったことで、国際人としての道を歩み出すのかも知れません。「国際人」を育成することを意識しなくても、授業やホームルーム、学校行事などを通して、生徒の「生きる力」を育てることが、結果的に「国際人」育成につながっているのではないかと感じました。本日はありがとうございました。

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