VIEW21 2002.4  リーダー群像
 現状をどう捉え、どう行動したのか

東急百貨店東横店 営業部食料品第一統括マネージャー
樋口武久

東急百貨店
「地下食品売り場改装プロジェクト」

「今までと同じじゃ、沈んでしまう!」
そんな危機感からプロジェクトは始まった

 「えっ、私が東横店の『リモデル準備室』にですか?」
 1999年2月、東京都にある吉祥寺店の食品売り場を担当していた私は突然の異動を命じられ、驚きを隠せませんでした。「リモデル準備室」とは渋谷にある東横店の店舗改装プロジェクトのために新しく発足したばかりの組織です。当時、百貨店業界は長期不況のあおりを受け、東急百貨店も経営的に厳しい局面に追い込まれていました。その年の1月には日本橋店が閉店になるなど、事業規模は次々と縮小されていました。東横店の店舗改装は、東急百貨店の生き残りをかけ、中核である東横店を起爆剤に会社全体を活性化させようとする、会社の浮沈をかけたプロジェクトでした。そのプロジェクトの成否の鍵を握る地下食品売り場の改装を任されたのが、私だったのです。
 郊外店の食品売り場の一担当者だった私に、会社の生き残りをかけた改装を任すというのですから、傍から見れば「大抜擢」だったと思います。しかし、初めは「なぜ自分なのか?」と戸惑いました。それまでも、仕事では他人と比べられても決して恥ずかしくない結果を出してきた自負はありました。ただ、私の上にはいつも上司がいて、達成目標を提示してくれていましたから、私は自己の役割を認識しながら仕事を進めていけばよかった。自分の身の丈に合わせて頑張っていたら、幸いにも成果が出せていたのです。ところがこのプロジェクトでは全体の投資額も決まっていなければ、スケジュールも決まっていない。具体的な中身もほとんど白紙の状態でした。全くゴールが見えない仕事を手掛けるのは初めての経験。しかも、プロジェクト発足当時の食品売り場担当者は私一人でしたから、「本当にできるのだろうか」と、プレッシャーは相当なものでした。

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樋口武久
東急百貨店東横店営業部食料品第一統括マネージャー。1959年7月8日生まれ。78年4月東急百貨店入社。吉祥寺店営業部食料品デイリーマートマネージャー、東横店リモデル推進業務専任副長を経て00年2月から現職。



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