美方(みかた)高校には、他の高校が簡単には持ち得ない貴重な財産がある。
美方高校後援会。同校の教育方針に賛同し、支援したいと思う人なら1口1000円で誰でも入会できる。後援会では、同校の運動部、文化部の活動を資金面などでバックアップする他、同校がインターンシップや保育・介護体験実習などを実施する際には、受け入れ先探しに協力したり、あるいは会員自身が受け入れ先になったりする。
現在、後援会の会員数は約3200人。同校の地元である三方町に関しては、世帯単位での後援会加入率は実に78%に達する。隣町の美浜町でも、半数以上の世帯が後援会に加入している。ちなみに三方町と美浜町がある三方郡は、若狭湾に面した福井県の南西部に位置しており、人口は、両町合わせて約2万1000人ほどだ。
「うちは県立と言いながらも、地元住民の意識としては郡立なんです。町行政も本校を応援してくれていて、後援会の会長も三方町と美浜町の町長が交互に務めているのです」と、美方高校校長の長谷光城先生は語る。
美方高校に入学する生徒の多くは地元中学校の卒業生である。
「美方高校に入ってくる生徒の学力の幅広さは、中学校と変わらない」(長谷先生)と言うほど、その生徒たちの学力は様々だ。同校には普通科3クラス(うち特進クラスが1クラス)の他に、生活情報科と食物科が各1クラスあり、卒業後の進路は難関大進学者から就職者まで多岐に渡っている。その中で、進学実績は毎年確実に伸びており、2001年度入試では普通科の生徒のうち約4人に1人が国公立大進学を果たした。
言わば、町の子どもたちを、町の高校で一手に育てている典型例ともいうべきこの高校を、町の人たちが支援している。
だが、美方高校は最初から地域に根差した高校であったわけではない。長谷先生が美術科教師として同校に赴任してきたのは10年以上前のことだが、「あの頃の状況は、とても今とは比べられません。隔世の感がありますね」と赴任当時を振り返る。
すべての教師が一人ひとりの生徒の進路希望や状況を把握し、指導に当たっている美方高校。生徒は、クラス担任ではない教師に対しても、気軽に相談を持ちかける。
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