授業改革につながる高校入試問題の分析と改善
広島県や静岡県の例のように、従来の選抜方法を変える動きがある一方で、入試問題自体を見直す地区も増加している。東京都をはじめ、幾つかの県では学校独自で試験問題を作成する方向である。
一方、全県統一の枠を崩さずに入試問題の改善に努め、大きな成果を上げている県もある。
山形県では高校入学者選抜の学力検査の問題作成にあたり、十分な時間と労力をかける伝統があるという。「不可ではない問題」ではなく、「教科担当の教師が唸るような十分に練られた良問」であることを妥協なく目指している。問題レベルの維持・向上のために、同県では毎年入試が終わった後、県内の中学校・高校から自校の実態や学力検査問題についての評価、意見を求めている。その報告内容を徹底的に分析し、『学力検査成績概況』という冊子にまとめ、県内の中学校と高校に配布するのである。
この冊子は出題の基本方針、実施結果の分析(出題のねらい、結果の考察、授業改善の視点)、成績概況、設問意図などから構成されており、入試問題の質を年々高めていくための資料として活用されている(資料3参照)。
山形県教育庁高校教育課の柳谷豊彦主任指導主事は、『学力検査成績概況』作成の意義を次のように語る。
「93年度、文部省より『新しい学力観』の四つの観点(関心・意欲・態度、思考・判断、技能・表現、知識・理解)が示されました。学力検査の各問題が、この観点の中のどの力を問うために出題されているかを明示することで、中学校で生徒にどのような力を身に付けさせる必要があるかが確認できるのです。また、『授業改善のポイント』は文字通り、日々の授業改善に活かしてもらうためのものです。高校でも生徒の学力の実態を具体的に把握し、入学後の授業改善に活用してもらいます。これは、『中学校・高校ではこのような授業を大事にしてください』という我々からのメッセージなのです」
さらに山形県では、04年度から学力検査と調査書の評価の比率を、一定の範囲で学校の裁量に任すことを決定している。また、すでに88年度からは、学力検査の採点において大問内の各小問の配点は、学校が独自に決定できるようになっている。96年度からは、選択問題も導入している。
「各高校は、配点を自校の基準で決定することによって、受検生のどのような学力を重視し、また、期待しているかを明確にすることができます。学校の個性化が叫ばれる中、『自校はどのような生徒を求めているか』を今まで以上にきちんと明示していくことが大切になると思います」(柳谷主任指導主事)
急激な教育環境変化の中で、大学入試と同じく、高校入学者選抜制度も大きな転機を迎えている。高校は中学校との連携を深め、生徒及び保護者へ自校の魅力を積極的に訴求し、さらに、求める生徒を確保できる選抜制度を工夫する必要があるだろう。
厳しくとも改革の道を選んだ高校だけが、地域社会から選ばれる時代がきている。
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