VIEW21 2002.4  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

新課程に合わせ、調査書の評価方法を絶対評価に変更

 静岡県は、03年度の公立高校入学者選抜で思い切った制度改革を予定している。これまで実施してきた「推薦入学」を「前期選抜」、そして現行の「一般選抜」を「後期選抜」として位置付け、希望する生徒には複数の受検機会を提供するのである。
 元々、静岡県は調査書を重視した「静岡方式」と呼ばれる特徴のある選抜を行ってきた。調査書・面接などの結果・学力検査の結果という三つの資料を基に、5段階に分けて順に合格者を決定していく(資料2参照)。これは教科学力だけでなく、生徒の様々な個性や可能性を多面的に評価すべきとの考えに基づき、各教科や特別活動の評定、諸活動の実績、さらに当日の学力検査などの中で、優れている点を評価するのがねらいである。
 選抜制度の改善に関して、静岡県教育委員会の安倍徹指導班長は「前・後期選抜の詳細については、各校の意向を踏まえて02年7月までに決定します。5段階評価の見直しは行いますが、生徒一人ひとりの個性を、手間を惜しまずに丁寧に評価していこうという姿勢はこれからも変わりません」と断言する。
 「ただし、きめ細かな選抜システムが、結果的に受験生には複雑で分かりづらい制度になっていたのかも知れません。調査書も各中学校で校長を委員長とし、3年生の担任団を含めた多くの教師からなる『調査書作成委員会』において検討の上、客観的に作成しています。しかし、校長推薦がなければ自分の行きたい高校を受検できないからと、生徒が必要以上に教師の視線を意識して萎縮するようなことでもあれば本末転倒です。03年度の選抜制度改革のねらいは、個性ある高校づくりの推進と並行して、それらの学校への受検を生徒が自分自身の意志で選択できるようにすることです」(安倍指導班長)
 また、中学校では02年度新課程から各教科の評定が相対評価から絶対評価に変わる。静岡県では新課程に対応して、03年度の入学者選抜から調査書も絶対評価に変えることを決定した。
 「中学校の評定が絶対評価に変わるのに、高校の入学者選抜における調査書が相対評価のままというのは、やはり教育的配慮に欠けるのではないかという考えがありました。絶対評価は相対評価と違い、生徒を集団の中で順位付けするのではなく、生徒一人ひとりが、どのくらい目標を達成できたかをしっかりと評価する必要があります。つまり、評価者である教師の力量が今まで以上に厳しく問われることにもなります。この点に関しては『入学者選抜制度協議会』で、高校と中学校の先生方を交えて十分な話し合いを行いました。
 その結果、一番大切なことは将来の静岡を担う人材を育成することであり、そのためにはしっかりと進路を考え、目標に向かって努力してきた生徒ほど志望が叶う選抜方法を実現したいという点で、会議参加者の想いは一致しました」(安倍指導班長)
 静岡県では高校入学者選抜制度の改革を通して、高校と中学校が本気で「将来の静岡県を担う人材をどう育成するか」について話し合い、学校段階を越えた中学校・高校の連携が深まってきている。

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