外部の専門家との積極的なコミュニケーションで、 授業をより充実させる
ただし、三宅先生は、授業をより充実したものにしていくためには自分たちの力だけでは限界があり、外部のプロフェッショナルの協力が不可欠だと語る。
「今回の『米米ワールド』を例にしても、より高い成果を上げるためには、お米を作るプロや本を作るプロのお力を借りることが一番の方法だと考えました。特に気を遣ったのは休耕田の扱いです。このテーマに関しては、どう扱うべきなのか、直接、農林水産省に電話したり、農協の人に尋ねたりしました」
地元水田の調査に当たっては、地域を歩いて直接、地域の方々に取材し、本の制作にあたっては、本書を出版した出版社の社長が直接、子どもたちに原稿の書き方や校正の方法などを指導する‥‥‥外部の人と交流することで、普段は学べないようなことも、子どもたちはどんどん吸収していった。こうして大きな実りを手に入れていったのだ。
評価規準を子どもたちと共有して、 成果や新たな目標について語り合う
『米米ワールド』は、環境と国際理解の両面から自己の確立と社会の中での役割を認識させ、「生き方」を考えさせることを目標とした平福小学校・高学年の「総合学習」の取り組みの一つである。
「お米というテーマを考えることで、子どもたちは自然に、良いお米を作るための良い水に、良い水質を保つための地域の環境に、そして世界的な環境問題にというように、今まで自分たちが調べたこととつながりを持つことに気付いていったのです。世界の物事は『点』ではなく、何らかの形でつながる『線』であることを実感したのです。また、子どもたちは地域の自然保護団体や農家の方々と接することで、自分が環境を守るために社会の中でどのようなことができるのかについても学んでいきました」
この取り組みの評価も児童たちに渡された「評価規準」に基づき、グループ内で相互評価を行ったり、先生とのコミュニケーションを通して行われる。
「評価規準の中には、『自分が環境のために何ができたか』という項目があります。ある子どもは、家で皿を洗うときには汚れを一度紙で拭き取るなどの行動を取り、親にも実践させました。しかし、『お母さんがずっと続けてくれなかったんです。だから僕の評価を下げてください』と言ってきました。私は、『家族の人にちゃんとお話して、1回だけかもしれないけどできたのだから、それは立派なことよ』と説得。自主的な行動を一つの成果として、もう一つ評価を上げるようにアドバイスしました」
取り組みの「10年間継続」を目標に、 OBとのネットワークを保ち続ける
「エコライフプロジェクト」とも呼ぶべき今回のお米に関する研究を通して、三宅先生は「総合学習」と基礎教科の学習が無関係ではないことを改めて実感したという。
「教科学習と『総合学習』で培う学力には、密接な関係性があります。『総合学習』を行えば、どの問題にはどの教科の知識が必要か自ずと分かります。『米米ワールド』の実践を通して、社会や理科などの知識の必要性がよく分かったはずです」
お米に関するこの研究は、新たな学級でも継続して行われていく。10年間継続するのが目標だ。
そのために、既に小学校を卒業したOBとも綿密なやり取りが行われている。
「『小学校を卒業しても、この課題に取り組んでいきたい』と言ったのは、子どもたち自身でした。私は卒業した子どもたちに、『それって結構大変だよ』と言いましたが、子どもたちは、依然として活動を継続しています。OBの中ではリーダーが決められていて、メールなどを使って私と定期的に連絡を取り合っています。この活動が、ずっと継続できれば素晴らしいことだと思います」
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