今年度から運営を学年主体とし 教師全員でつくり上げる
以上のように、同校の「国際理解」は、NFTの実施を機に新たな役割と機能を与えられ、その内容を大幅に充実させた。そして現在、同校の教師たちは、一つの取り組みの成果を、NFT全体を見据えて評価する。
「『国際理解』を通して生徒の自己理解が進んだと思います。例えば自分たちは勉強に追われて大変だと思っていたのが、外国の高校生の様子を聞いて、大変なのは自分たちだけではないと、自己を相対化できるようになりました」(岩本先生)
「『国際理解』は国際社会で活躍したり、英語が話せるようになることだけが目的ではありません。国際人としての意識を持ち、自分の意見を的確に表現できることが原点です。今はまだ入門編ですが、将来的にはパレスチナ問題について自分はどう考えるかという段階にまで持っていけば、それが『自己表現』にもつながっていくはずです」(杉本先生)
だが、初年度の活動において課題がなかったわけではない。特に「取り組みの実施に向けた、教師間の意思統一の進め方には改善の余地が大きい」と、立ち上げ時からのメンバーである今井和愛先生は言う。
「昨年度は一年次のみの実施ということもあって、教師間の共通理解が必ずしも十分ではない面もありました。例えば『ワークショップでは、国際交流の経験がある先生や英語の先生はあまり抵抗なく入り込めた反面、経験のない先生は生徒をどう動かすのか、何をすればいいのか、戸惑ってしまうケースがあった』という声も聞かれました」
こうした問題は「キャリア研究」や「自己表現」においても起こり得る。そのため、同校は教師間の理解と意識を高める取り組みに今年度から着手している。「国際理解」の企画・運営について、当該の教師陣が一泊二日の研修を行うようにしたほか、運用面においても、9名で構成する企画委員会が中心となって運営するスタイルから、学年団中心で行うスタイルとした。
一方、NFTとその他の活動のつながりを考えていくことも今年度の課題と言える。
「昨年度のNFTは土曜日を活用して行っていたのですが、完全週5日制となった本年度からは、毎週水曜日、『総合学習』の1コマとLHRの1コマを連続運用することで活動時間を確保しています。LHRとの連動はもちろんですが、今後は学年経営、学校経営そのものの方向性をどうするかという中で、NFTを捉える必要があります」(今井先生)
そこで同校では、他の学校行事の日程も含めた形で、昨年度末にNFTの年間タイムテーブルを作成した。今年度はそれに調整を加えながら活動を進めているが、以前にも増して活動相互の連携が意識されているという。中でも「キャリア研究」「国際理解」「自己表現」の各要素を連携させながら進路を考える「私の夢研究」という新事業の立ち上げは、NFTが新たな段階へとシフトする上での試金石と言えるだろう。
「たとえ『総合学習』の制度枠がなかろうとNFTは実施できる」と口を揃える同校の教師たち。その意義を踏まえ、西高オリジナルの指導を学校全体を通したものにできるかどうか? 同校の取り組みは新たなスタート地点に立っている。
NFT(西高フロンティアタイム)の目標と内容
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ねらい
- 活主体性のある自己表現力の育成
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年次別目標
- 1年次…考えること・行動することの基本姿勢を確立する。
2年次…考えることの深まりと、行動の広がりを求める。
3年次…社会の中での自己の在り方を考える。
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内容
- (1)キャリア研究…学習計画と進路設計に関する研究と活動。
(2)国際理解…自国及び他国の社会・歴史・生活・文化について理解を深め、国際交流のための実践的コミュニケーション能力を高める学習と活動。
(3)自己表現…自分自身の考えや意見を、常に明確にし、発表できることを目指す学習と活動。
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