VIEW21 2002.9  コミュニケーション新時代
 生徒との時間をより大切にするために

情報技術(IT)化戦略を担う校務分掌を立ち上げ
校内・外のコミュニケーションの深化を図る

福井県立藤島高等学校

 福井県内屈指の進学実績を誇る藤島高校は、校内はもとより、校外の保護者や卒業生ともコミュニケーションを深めていくために、情報環境の整備を行った。その最大のポイントは情報化推進を担当する「情報企画室」を立ち上げたこと。「情報企画室」の担った役割とはどのようなものなのか。コミュニケーションはどのように広がっていったのか。その実状をレポートする。


 「『情報環境の整備』の必要性は理解していても、学校現場ではなかなか、そのための専門組織を立ち上げるのは難しいですよね。しかし、一方ではホームページの作成・管理や校内LANの整備など、学校全体で迅速に対応していかなければならない情報関連の課題が急増しているのも事実です。そこで、先生個人に任せっ放しにするのではなく、専門の組織を立ち上げるべきではないかということになったのです」
 こう力説するのは藤島高校・情報企画室室長の沖村嘉洋先生だ。
 藤島高校は、140余年の歴史を持つ伝統校。県内トップクラスの進学実績を誇り、福井市の中心部・文京地区に位置する。伝統校は新しいことへの着手に時間がかかるとも言われるが、同校の場合、新たな事柄に積極的に取り組むことも「伝統」の一つ。校内の情報環境の整備に向けて、沖村先生を筆頭に河野和博先生、久守徹先生、川内邦央先生、川崎直樹先生の計5名からなる「情報企画室」が校務分掌として立ち上がり、今年度から本格的に活動を始めた。

校務分掌として設置された「情報企画室」で、
様々な情報関連の課題に対応

 「情報企画室」が成立するまでのプロセスを概括しておこう。
 パソコンやインターネットが、日本で急速に普及しつつあった1996年、「学園祭の目玉である『全体会』の発表テーマについて、メールで保護者や卒業生の意見を集めたい」という声が生徒から挙がった。しかし、当時の藤島高校にはインターネットに接続しているパソコンは1台もない状況だった。そこで、同校の教師たちは近くにある福井大に依頼して、大学のコンピュータを使わせてもらうことにした。
 すると、その後も生徒や教師からホームページ開設の要望が相次いだため、パソコンに詳しい教師がホームページの運営を試験的に開始した。折しも同じ頃、校内では教務部がパソコンでの成績処理システムの見直しを図ったり、現「情報企画室」の前身となる「情報処理委員会」を立ち上げて、校内で噴出し始めた情報環境の整備に関する様々な課題や要望への対応に当たっていた。
 しかし、当時の「情報処理委員会」はパソコンに詳しい複数の教師による「個人運営」に近いものであった。担当の教師たちは、教務部や進路指導部などの校務分掌に加えて、「情報処理委員会」にも所属していた。そのため、対処しなければならない課題が増えるにつれ、同委員会にかかわる教師の負担は非常に大きくなっていった。
 「96年のホームページ開設から、運営管理を担当していた川崎先生は、新婚旅行先からもホームページの確認や更新をしなければならないほどでしたね(笑)」と沖村先生は述懐する。


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福井県立藤島高校 校長
田中完一
Tanaka Kanichi
教職歴37年目。同校に赴任して1年目。「豊かな教養とバランス感覚を合わせ持った、そんな生徒を育成したいと考えています」
福井県立藤島高校 教諭
沖村嘉洋
Okimura Yoshihiro
教職歴27年目。同校に赴任して6年目。情報企画室室長。公民担当。「文武両道を基本とした教育を実践し、生徒とのふれあいを大切にしたいと思います」

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